柚のかくし味 by 柚


2004-02-29 『蛇にピアス』を読んだ

蛇にピアス(金原 ひとみ) どうしようと思っていたけれど、やはり買ってしまった。たくさんの話題を振り撒いている金原ひとみの、けっこう衝撃的なストーリーに圧倒されて、一気に読んだ。若さはもちろんだが、蛇の舌のように自分の舌にピアスをつけ、その穴を徐々に広げていき、最後に二つに分けてしまうという。そのプロセスの中で男と出会い、その伏線になる事件が起こる。プロットの作り方は完璧で、表現も滑らかだし、手法自体はそれほど奇抜ではないのに、内容が奇抜なせいで、思わず引き込まれてしまう。村上龍の『限りなく透明に近いブルー』や山田詠美の『ベッドタイムアイズ』をすぐに思い浮かべた。

さて、蛇にピアスだが、まずタイトルがいい。蛇にどうやってピアスなんかするんだろうなんて、馬鹿なことを考えたけど。実はそうではない。蛇の舌にするためにピアスをするのだ。こんな小説を読むと、完全に時代のずっと先を行っていると思う。金原はすでに、小説の読み始めに読者をひきつけてしまう方法をすでに心得ている。

「スプリットタンって知ってる?」で始まる一行目がすでにこの小説の面白さを暗示している。それは、そのまま、分かれた舌を持つ男との出会いへとつづくのだけれど・・・。

きっと、こんなカップルもこんなストーリーもこの日本のどこかにすでに存在しているのだろう。不思議な後味を残す小説だった。


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