柚のかくし味 by 柚 |
地球の裏側に住む甥のYくんと、このところ頻繁に電話で話している。話す相手を限定してのパソコンを通じての電話である。お互いにパソコンの前に座り、相手を呼び出すのだが、まるでそぐ近くにいるように話せる。彼の住むチリは、まさに地球の裏側。何しろ、今は夏なのだから。ちょうど1年前、チリを訪ねたときのあの、名状しがたい感覚を思い出す。ほとんど2日がかりで飛行機を乗り継ぎ、冬から一気に夏へと下りたった、あの肌に感じた、ひりつくような乾いた空気。
年末にアプリコットの収穫を終わって、一段落らしい。チリの夏はめったに雨が降らない。今年は収量も出来もよいと期待していたのに、思いがけなく季節はずれの雨が降ったのだそうだ。それが結構なダメージだったらしい。アプリコットのような果物の収穫時期には、雨が降らないということが大切なのだと初めて知った。雨は、果実の表皮にダメージを与えたらしい。
そんな話を聞きながら、地球の裏側で暮らす彼らの日々を思う。冬の草原は雨が降らないので、枯れたまま。逆に秋から冬にかけて雨が降るために、青々とした大地が出現するのだと聞いた。自然のままにという言葉は彼らにこそ、当てはまる。私たちの普段のささやかな暮らしは自然から程遠いことを、思い知らされた旅だった。
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