柚のかくし味 by 柚 |
日韓詩人交流「海峡を渡るソリ(声)」のイベントが無事終わり、静かな生活が戻ったので、長くご無沙汰だったふるさとに戻り、高齢の父としばらく時間をすごした。97歳。長くは歩けないけど、食事は自分でできる。毎日、新聞を読み、テレビを見て過ごす。少し雨と風のある日。テレビでは、原発事故のニュースの再放送が行われていた。それをみて父は、エネルギーのことを話し始めた。
もっと、風力や太陽光発電を広めて蓄電を考えるべきだと。自然の発するエネルギーの力を馬鹿にしてはいかんというわけだ。ふうん、考えだけはしっかりしているなあと、感心する。そして、塩分や糖分のとりすぎに注意し、健康を考えているという。そこでわたし。「父さん、今更もういいじゃないの。好きな者を食べたいだけ食べたら」「そうはいかん。寝たきりで食べたいものも食べられなくなったら、生きていても仕方がない」
まあ、確かにねえ。もうここまできたら白寿まで、いえ、百歳までは生きてよね、などというと、「みな人のことだと思ってそういう。これで生きるのはなかなか大変なんだぞ」と。口もなかなか達者である。
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