柚のかくし味 by 柚


2004-02-17 万華鏡の世界

「たまには少し、ほっと息抜きしたほうがいいわよ」という言葉とともに友人のKさんから「万華鏡」をプレゼントされた。正直、言葉は知っていても、実際に見たのははじめて。ああ、これだったのかと不思議な感覚を味わった。

仕掛けはかんたんである。筒の中をのぞくときらきらと流れるような光の粒がきらめいては消えていく。

「万華鏡」には、ちょっとした思い入れがある。学生時代に読んだ本レイ・ブラッドベリの『万華鏡』が今でも忘れられないのだ。いかにもブラッドベリらしいSFの世界だが。宇宙を旅する宇宙船が何かのトラブルで故障、決して地球には戻れないとわかった。宇宙飛行士たちは、始めのうちはお互いに交信しながら宇宙をさまよっているのだが、やがてお互いの声が遠ざかっていき、ついには聞こえなくなる。そして、まったくの静寂が訪れる。孤独と戦いながら、かれらは落ちていく。落ちていくしかないといったほうがいいかも知れない。緩慢な死に向かって。短い短編だが、なんとも切なく、しんとした小説だった。孤独の意味を考えさせたりして・・・。

Kさんの万華鏡はそんな懐かしいことを思い出させてくれた。


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