柚のかくし味 by 柚


2004-04-06 本づくりのこと みたび

気持ちよい毎日が続いている。昨日昼間、お花見をした。こんなに近くにいながら、西公園はゆっくり歩いたことがなかった。月曜日の昼というのは、けっこう狙い目だったようだ。朝晩がまだ涼しいせいか、桜はしばらく楽しめそう。

さて、最近書肆侃侃房で作った本のことを少し。

呼応しあう二冊の本

めぐり合う杉林せいこさんの二冊の本『めぐり合う人も日も自分では決められない』『早く気づけばそれだけ早く幸せがくる』は、原稿を見せていただいたとき、杉林さんは、1冊にまとめるつもりだった。

しかし、読んでみてわたしはつぎのように提案した。

  • 二冊に分けませんか。
  • 二冊は少し間を置きましょう。

早く気づけば300ページを超える内容のエッセイはいくらおもしろくても読んでいて疲れる。テーマも、おおよそ、恋愛と人間関係の二つに分けられそうだったから。こうして二冊の本はそれぞれ、160ページ、ちょうど読みやすく持ち歩きしやすい厚さになった。本を持ったときの手触り感は微妙だけど、とても大切なのだ。最近は紙の種類が増え、色も質感も沢山の種類がある。少しザラっとしていて、軽く感じられる紙もある。そんな紙を使うと少しボリューム感が出たりもする。

杉林さんの本は地道だけど、確実に出て行く。こういう生き方の本は迷ったときに読みたくなるので、誰にでもフィットするわけではないが、フッと読みたくなることがあるらしい。実はこの本があるカップルを生み出したのだ。この本を買った人がほんとうにこの本をきっかけにパートナーにめぐり合って、最近結婚してしまったのである。そういう効果もあるのかと、不思議な思いで眺めている。

家事する男を応援したい本

『新版 家事する男は美しい』

この本もまた、不思議なめぐり合わせの本である。著者の藤原ゆきえさんは、ライターズネットワークで知り合ったとてもいい関係の友人。新版としたのは、以前別の出版社で出版したのだが、この出版社がなくなった。せっかくいい本だったのに、と元々自分で編集した本だけに残念だったのだが、今回、ぴのこの「そうだ、これこそ、書肆侃侃房で」という提案で、藤原さんと相談。新しく生まれ変わることになったのだ。これも、藤原さんの人柄がにじみ出るような内容で、この本を読むと、家事をするのに何の抵抗もない気分にさせられるはずだ。やさしく、丁寧に説明が行き届いていて、衣・食・住・育児の「いろは」がすっきり一冊に納まっている。結婚の贈物や一人暮らしを始める人にもいい。

家事する表紙挿画の末房志野さんの絵がとてもいい。「焦がしアート」というオリジナルの手法で描かれていて、ほんわかと暖かい。この今後が楽しみなアーティストの末房さんと藤原さんの三人で、表紙のデザインを決めるのに集まったのは、横浜のすてきな喫茶店「カヲリの木」。オーナーの狩野さんともすっかりコーヒーの話で盛り上がり、今度コーヒーの本を一緒につくりましょうなんて話になっている。是非実現させなければ。

このように本づくりは正に出会いである。昨日も本をつくりたいという若い人に出会った。話していると、いつの間にか本の形が見えてくるのだから、不思議だ。ただ、暖めているだけでなく、言葉にして、誰かに話してみることだろうなと、いう気がする。


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