柚のかくし味 by 柚


2004-04-01 本づくりのこと ふたたび

毎日、ハラハラと散る桜の木の下を歩くと、ぷーんとかぐわしい香りに包まれる。木の種類によって香りの種類が違うことも最近になってわかってきた。今ごろになって、という気もするけれど、人間、急に何かに気付くことがあるものだ。

さて、本づくりのことだ。

「ライターズネットワーク」という組織がある。フリーライター、フリー編集者、イラストレーター、それに出版社に属する人などの集まりで、本部は東京。わたしもその役員をしていて、「ライターズネットワーク」のホームページ製作と会員管理を受け持っている。その集まりに出るようになってかれこれ5年。東京での出版活動の現場の話を聞くことが多い。ライターのほとんどが自分の本を出したいと思っていて、企画の売り込みをする。どこの出版社もいい企画といい書き手を欲しがっているのも確かで、うまく成立すれば、出版にこぎつけることが出来る。

でも、地元福岡ではまだまだ、自分の本を出したいと思っているライターは少ない。むしろ、今まで本どころか、原稿といったものをほとんど書いたことがないという人の方が企画もいいものを持っているし、押さえどころもいいということがあるのだ。私がいままで、企画編集した本でも、そんなものが多い。

先ずはテーマ

晴れのちくも膜下(有田 直子) 二十代の若さで、くも膜下出血で倒れ、奇跡的に回復した有田直子さんの著作『晴れのちくも膜下』や、母親の在宅介護の実態を、楽しくユーモラスに伝える坂口久美子さんの『超人バッキー』はいい例。二冊ともとてもいい本だ。

超人バッキー―らくらく介護への道(坂口 久美子) 二冊に共通しているのは、著者の意欲だ。どうしても本にしたい、みんなに伝えたい。そんな思いが切々と伝わってくる。編集者としての楽しみは、著者の思いを共有すること。文章の上手下手も確かに気になることだが、先ずテーマありきである。テーマこそが大事なのだ。いいテーマさえあれば、文章など、後からついてくる。

もちろん、この二冊の著者の文章はとてもいい。しかし、もっと良かったのはテーマだろう。本はときに万人が読みたいと思うジャンルである必要はないのかも知れない。いえ、世の中に関心のある人が1万人いて、その1割か2割ぐらいの人が買ってくれれば、そこから始められるし、もうそれだけで、成立する世界なのだから。


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