化粧女王を探す長い旅 by 大王

2003-09-24 謎の笛吹き女性集団の巻

[走りまくる湯布院]

title0 ノコピイさんに遅れないようにほとんど駆け足に近い速さで歩きます。 肥満体にはつらい速度です。太陽もじりじりと強くなっている時間でもあるし。title1 やがて、だめだああ。もう歩けない。 ノコピイさんを追うのを諦めて、小学校のような妙な建物の中に入ると、そこは湯布院美術館だったのです。 とにかく座るところはないのか。周囲をよく見渡さないままに、座り込む場所を探しているうちに、妙な光景が目に入りました。

title2 気がつくと、どんどん先に行ったと思っていたノコピイさんが、不思議な望遠鏡みたいなものを通じて、僕と同じものを見ているようです。

title3 縦笛や横笛、フルートに東洋の管楽器。ありとあらゆる形の笛を手にした女性の集団が、たくさんいるのです。 なんぢゃあああこりゃああ。 しかし、肥満体から滴り落ちる汗で、視界にも涙のようにあせが入り込むのでまともに見えません。

光る足と笛集団

title4 笛集団が笛を吹きながらあちこちに散らばりはじめました。 縦笛は縦笛の方法で、横笛は横笛の奏法で、古典の笛はそのように、フルートはそのように。 てんでに統一なしに、笛をふきまくっているのです。title6 音楽のようでもあるのですが、特に旋律はないようです。自分の意思で吹き、合図があるまではやめない。建物のあちこちを吹きながら歩くのです。

title7 いったいなんなのでしょう?笛を吹く人々が前を横切るたびに小さな声で尋ねるのですが、誰も答えてはくれません。

 笛を吹くのに集中しているので。

 ノコピイさああん、いったいこれはなんなのでしょう。ぜいぜい、しながら、僕は尋ねましたが、ノコピイさんは、何も答えず、ただノコピイさんの足が、太陽光を反射して輝いていたことだけが、今となっては記憶に残っているすべてです。

title8

 なぜなんだろう。どうして笛なんだろう。そして、ここでなにをしているんだあ。 噴き出す汗。したたりおちて、まぶたの内側までびっしょりです。こんなに疲れてなければなああ。笛の音にかきけされているものの、僕ののどは、さっきから、ひゅうううううう。ひゅうううううう。呼吸をするたびに、風が通過するような音が発生していたのです。

title9 やがて、唐突に、笛吹きは終わりました。女性達は、笛を手にして、あっさりと最初の場所に戻って来ます。

 おつかれさまでした。全員が一礼したあと、いったいなんなのだろう。追う気力はありませんが、好奇心に満ちた僕をはぐらかすかのように、さっさといなくなってしまいました。

蒸気機関車が背後に

title10 建物の背後には、蒸気機関車が見えました。木造校舎のような美術館の建物は不思議な懐かしさを覚えるのですが、背後の蒸気機関車も気になります。

title11

 さあ。休みで時間をロスしましたよ。笛もみたし、次の目的地に行きましょう。

 えええええ。まだあるくんですか?

 そうですよ。

 あと、どのくらいですか。僕は愕然として質問していました。なにしろ時間がありませんからね。

 重たい身体を、よっこらしょおおおお。とかけ声を出して立ち上がると、よろよろとよろけそうになりました。


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