化粧女王を探す長い旅 by 大王

2003-09-18 ドライブイン『オハイオ』跡の巻

[日本一怪しい公園]

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 今年は、大学生の出足が悪いなあ。おじさんがこぼしていました。 大学生がくるんですか。そうだねえ。夏休みに入ると、訪ねて来る人がいるし、何人かのグループでくるひともいるねえ。天候が悪いからですかねえ。

 見慣れた園内の豚は、僕のお気に入りになりました。夏の太陽を浴びて、天上から水を吐きながら落下してくる豚。涼し気でとってもシュールです。しかも、形が美しい。何度みても飽きません。title1

 でも、この場所でお客さん来ますか?駐車場が広いけど通過されてしまうのでは?

 年間2万人くらいはきていますよ。その数字は、この道路を通過する車両の1%から2%くらいではないでしょうか。

 田子作を地下から地上に露出させながら、おじさんはいいました。

頭上の美女と工房

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 頭上にはバンジー美女が白目をむいて、やってきたひとを驚かそうと、立ち姿でいます。

 おじさんは、話を続けました。 元ではほとんどかかっていませんからね。title3

 ここで廃品をいろいろ加工しているから、制作費は自分が作るからいらないし。

 ここですか?この場所にうつって来たのは2年前です。それまでは山の中でやっていたけど、なかなかお客さんがこなくてねえ。 古いドライブインが、廃虚になっていたので、ここを借りました。

ドライブインオハイオ再生

 なるほど、入って来た時から感じていた建物の廃虚感は、ここが廃虚だったからです。

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 20年間も空家だったので、もう、女房とふたりでおれるようにするのに、清掃が大変でした。なんとか、ここまでしたんだけど、すごかったよ。

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 昭和50年代後期の仕様で、ドライブインは開店からほどなく廃業し、その後は、入居する人もなく、野ざらしになっていたということです。

 レストランの名前は『オハイオ』 アメリカの南部の町の名前ですね。

 オハイオかあああ。はるかアメリカの土地を思い浮かべるのですが、僕が感じたのは『オハイオ』で行こう!つぶれた店の命名をしたひとの、決意のほどだけでした。

四手ピアノの真実

title6 メロンみたいな穴からしゃぼんだまを吹き出すカエル。何度もいっていますが、ここでの造形は豚が一番で、カエルは存在感が薄いのです。

 造形力が最大に発揮されたのが豚だったのでしょう。title7

 これはね。こうするんです。 おじさんは、水車で自動演奏を続ける鍵盤楽器の後ろにまわって両手をかざしました。

 おおおおおおお、おじさんが四本手になって楽器を演奏しているうううう。 だから『四手楽器』というのです。そうなんだああ。おじさんは、昔はなにをしていたんでしょう。

 昔ですか、普通にはたらいていましたよ。バブル崩壊前迄は、会社をもっていました。

四手ピアノが二手になる時

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 そうでしたか。では、これはまるきり趣味だったんですね。

 趣味ではなく、本業です。会社していたころから、こういうことが好きだったんですか。いいえ。これは会社をやめてからはじめました。

 おじさんがバブル崩壊から今迄どんな人生をたどってきたのか、それは、公園に立つと伝わって来ます。

 この公園が、訪問してかなりの時間が経過してもなお、心の中に永遠の風景のように刻まれている原因は、それは、会社をやめたおじさんが、これらの造形を作るにいたった心の動きが、ひとつひとつの造形に刻まれているから。

 だからこそ、忘れられないのです。 奥さんがおべんとうをもってきてくれました。おじさんのために。

 四手ピアノの前から、おじさんが消え、二手ピアノに戻りました。 そうして、僕は、いつまでも、二手ピアノの前で、ああ。ここにきてよかったなあ。いつまでも、そう思っているのでした。

 日本一怪しい公園。ここで過ごした時間にもやがて終わりが迫っていました。

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