化粧女王を探す長い旅 by 大王 |
あまりにも唐突に『ゴールデンウイーク特別企画/ペンギンの世界』という場所に出ました。
この得体がしれないものを収集したひとは、ペンギンもすきなのでしょうか。五月の連休に設置して、そのまま、おきざりにしているような投げやりな場所です。
なにしろマネキン地獄の奥にあるので、最初からとうてい、まじめな企画とか思えませんが、いちおうペンギンがずらずらならんでします。
ペンギンでさえ、なんだか恐くなる場所の力なのでしょう。ひー。ペンギンがたくさんいるよ。
あまりにもバスガイドがリアルなんで、近付いてみました。本物の人間と思いましたな、一瞬。でも、もちろんマネキンです。
不思議な格好したにいちゃんとともに、バスガイドの制服で観光案内しています。どんな脈絡があるんだあ。ペンギンの次はバスガイドで、そして、その次から人形とお面の陳列がはじまりました。
歩いていると、なんかにけつまずいたので、下を見ると、ぎゃあああああ。ひいいいいいいっ!絶叫してしまいました。
館内に、ほかの客もいたのに、俺が絶叫に誰も反応しないのもこわい。絶叫は、館内の効果音とでも、思っているのかア。
なんぢゃこりゃあああ。顔面は間抜けているのですけど、見ると気持ち悪いうえに、ほんとに動きそうで、恐い。こんなもん、放し飼いにしとくなあ。気持ち悪いんです。
写真ではけっこうみえていますが、実際は、暗がりに潜んで、座っているので、全然目立たないけど、ぞっとするようなものでした。
昭和五〇年代に登場したといわれる『おたく』の部屋を再現したところに出ました。これが、引きこもり族とか、を派生することになる、『おたく原始人』なのかあ。
足下には野球盤ゲームがありました。
しっかし、脈絡ない展示だなあ。でも、そのごちゃごちゃ感がすごいです。
黒キユーピーとかいたのか。細かい点も気になるんですが、圧倒するのは、数です。キユーピーでもこれだけ集まると、圧倒的であります。全部を一度に撮影できなかったので、量感を出すために写真を重複して表示しています。実際の感覚に近い。
生ながら顔面を解剖される姿とか、自分で腹にメスをいれてかっさばいて手術している人とか、いきたまま首から上をえぐりとたれている骸骨とか、なまなましいものが続く。
有名作家の人形作品とおもわれるものもあるけど、ここにあると、単なる化け物人形だ。
昭和50年代のゲーム喫茶を再現している場所がありました。インベーダーゲーム機とかがあって、懐かしかった。客は誰もいない。 隣には、たぬきのはく製が桃太郎になっていました。たぬきなんだ。
この日記をつづっている間にも、ふしぎな町の最後の日がちかづいています。
この空間がなくなると思うとさみしさでいっぱいです。自宅のそばには決してあってほしくないけど、日本のどこかにはあってほしい。
ディズニーシーはなくなってもいいけど、ここはあってほしいな。 いよいよ。最後の出口にちかずいてきました。といっても館内は順路とか、あってないようなものなので、どこをどうゆこうが、出入り口は同じ。まるで、腔腸生物みたいなつくりなのです。
日本の妖怪たちも等身大でせまってきます。こなきぢぢいは、じじいの頭部より、なまめかしい下半身が恐いです。ぬらりひょんもいますね。
等身大の必要があるのかああ。
あああー、こんなところに!知人ににたマネキンがいたので、撮影してしまいました。服装の趣味までにてるがな。
メリーゴーランドが廻っています。この人形たちをつぶさに撮影したいのですが、もしも、直接行く人のために、この素晴らしいメリーゴーランドのことは、詳しく触れないことにしています。いつかどこか「ふしぎな町」が再現されたときに、ぜひ現場にいってみてみましょう。
狂気ともおもえる世界なのですが、僕は中に三時間はいました。狂気なんですけど、居心地がよかった。心の中の理想郷みたいな気持ちまでしてきました。 でも、ここにすみたいとかはいいません。夜中はこわいから。
最後に『美女の入浴のぞきみ』という場所で、こっそり盗み撮りをしてしまいました。
狭い長屋で、自宅風呂にはいれるごみぶんだなんてうらやましい。
土地の古老に聞くと、この場所は熱海市の土地建物らしくて、これまで、市がどんなことをやっても寂れてしまう場所だったそうです。
もっともあたったのが、『ふしぎの町』博物館だそうです。でも、三年間の賃貸契約も終了し、次の予定がはいっているので、撤収しないとならないそうです。
熱海市も、もったえないことするよなあ。寂れる一方の熱海温泉にふさわしい博物館だったのに。もういちと、どこかに出現することを祈って、町をあとにしようとおもいます。
ところで、化粧女王はどこにいってしまったんでしょうか。このマネキンの中にいたのでしょうか。
(撮影場所は、静岡県熱海市に実在した『ふしぎな町1丁目』博物館でした。現在は閉鎖され別な場所での再開を計画しているそうです)
ふしぎな町から戻ってくると、すっかり頭が混乱してしまい、そのまま東京に戻ってもしばらくショック状態で立ち直れそうにない。
それで、キミさんのおたくを訪ねることにしました。キミさんの家は東京の下町にある古い町家で、銭湯もしているし、駄菓子やもやっているという、なんだか、ひと昔前の生活をしているのです。
だから、ここにくると、ほっと落ち着きます。いまどき、よくこんなものをもっているなあ。ものもちもいいなあ。感心してしまうほど、古風な室内なのでした。
まあ、お茶でもどうぞ。どこいってたんですか?
不思議な町に化粧女王をさがしに!
そうは答えたものの理解できませんよね。きっと。
こうしてお茶をいただいて、熱海名物の熱海せんべいをおみやげにあげて喜ばれていると、なんだか気持ちが安らかになってゆきました。
ミシンがありますねえ。あれは飾りですか?まさか使ってはいないでしょう。
いいえ、使ってますよ。このシャツも、ミシンで作ったものだし、母親の服とか、私の服とかもよくつくるんですよ。
えー。そうなんだあ。すごいなあ。
ミシンと言えば、昔から。。。
僕がそういうと、キミさんも僕と同じ事をいったので、
ジューキですよね。と二重奏になってしまいました。記念写真を撮りたいので、ジューキのミシンに座ってもらい、縫っているまねをしてもらいました。
熱海から戻って、キミさんとこに来てよかったなあ。このときはそう思ったのですが、そのまま、昭和の時代から抜けだせなくなるなんて、そのときはあまり考えなかったのです。
テレビでニュースでもみますか?
僕がそういうと、キミさんは、微笑みながら、答えたことにもっと注意をはらうべきでした。
カラー放送の時間は終わっているし、壊れたら修理もできそうにないから、テレビは今夜はみないのよ。
ふーん。そうなんだあ。そういえば午後八時を過ぎると、国営放送もカラー放送時間終了になるんだったなあ。ぼんやりと思い出していました。
それにしても暮らしぶりが徹底してるよね。いまどき、こんな生活している東京の人がいるの。。ここにいらっしゃるけど。 いますよ。テレビとかで紹介されている東京は、ほんの一部分たけで、昔からいるひとは、意外に、こういう生活が主流なんですよ。
やはり御飯を炊くのは、東京芝浦電気製の電子炊飯器でないとねえ。キミさんは、そういって、愛おしそうに、炊飯器のふたを手にしていた。
そうなんだ。そういうものかもしれない。あまり、不審にも思わずに、そう考えたが、古い電子炊飯器もあるし、天井は板張りだし、柱時計もいいかんじだ。
徳利の熱燗を出してもらったけど、俺は酒がだめなので、見ているだけだ。いつまでもじっと見ていると、
酒は、見るものではなくて、飲むものよ。
外に出ると、最近はみかけない木箱の牛乳いれがありました。なつかしいなあ。九州だと、ここに永利牛乳がはいるんだよねえ。
そうはいっても、キミさんは関東育ちなので、永利牛乳がなんだかわからないでしょう。まあいいかあ。
銭湯につくと、キミさんが、さっそく番台にのぼります。もうお客さんがいない時間なので、銭湯はひっそりとしています。
番台がこんなに高い場所にあるなんて、あらためて下から見ると、そう思いました。
銭湯に来たら、まず最初にすることは、人それぞれですが、キミさんは、体重計に乗る事だそうです。
でも、みちゃだめよ。
体重計の40キロから50キロのあたりの目盛りのところを手で隠したので、キミさんの真実の体重は類推はできるものの、正確なところは、わかりませんでした。だから、僕の認識の中では、キミさんの体重は40キロから50キロの間、としか分からないままなのです。
これは、脱衣籠ですよ。
知ってますよ。そのくらい。九州にも銭湯がありますから。銭湯よりも立派なスーパー銭湯だってあるんですから。
僕がいささかむきになっていうと、キミさんは笑顔のまま、九州には銭湯がないとおもっていたから、わざわざ教えたのよ。
と言いました。
せっかくなので、キミさんも銭湯にはいることになりました。僕は、キミさんの後ろ姿を撮影して、潜り戸を押して、男性用の方に戻ったので、この後は撮影していません。
しかし、この後ろ姿を、撮影してしまったことは、キミさんには内緒にしているので、『あー盗撮されたああ』と、おこるかも知れません。ごめんなさい。
というわけで、アレ止めによく効く/クラブ美身クリームのポスター少女が、微笑む中、僕は男子湯から。
キミさあーん。
キミさんは女子湯から。はーい、なんですかあ。
僕は男子湯から。私は、わずかな時間で、湯にのぼせやすいので、もう全身ゆでだこのように、真っ赤です。あとどのくらい入っていたらいいですか。
キミさんは女子湯から。そうですねえ。男ですから、30は数えましょうか。それからあがってください。
現実感が強い夢を見たことがありますか。僕は、キミさんと話しているうちに、旅の疲れでそのまま寝てしまい。そして、夢をみていました。
キミさんに案内されて、町の神社を訪ねるのですが、すでにしまっているのです。
キミさんが笑っているのですが、次の瞬間に場所が入れ代わり。そしてlキミさんの着ているものも、さっきとは違っているのです。
縁側が近い場所に座っていて、キミさんの前には、「おから盛り」という、おからをまるでケーキのようにした和菓子が、出ていました。
キミさんは、とてもうれしそうに、和菓子を眺めているのですが、僕はなんだか、どきどきしていました。
夢からさめる直前、どこかの廊下にキミさんがたたずんでいました。いったいどこの廊下なのか、よく思い出せないうちに、隣の部屋で、黒い電話機が鳴り響いたので、僕はいやでも目が醒めました。
いまから思えば、この時に目が醒めていなかったら、どうなっていたんだろう。元の世界に戻れなくなっていたかもしれません。
目がさめたら、キミさんは、夢の中と同じ服を着ていました。
「よく寝ていましたねえ」 はい、きっとつかれていたのでしょう。
そういえば、今度の旅の目的は、化粧女王を探すことでした。
市内電車にのって行きましょう。都電に乗ってゆきましょう。 都電かあ。都電が走っているところは、早稲田と。早稲田と雑司ヶ谷と。あとはどこだっけ。そんなには残っていないはずだけど。
その前に。 「鯨の缶詰めを買ってゆきましょう。途中でお腹がすくといけませんからね」
キミさんは家を出るなり、向かいの商店にはいって、マルハの鯨の缶詰めを買い込みました。そんなにたくさん買わなくとも、缶詰めはこんなにありますよ。
この分だと、昼も夜も鯨の缶詰めなのかなあ。いささかげんなりしました。するとキミさんは、僕の心を見すかしたかのように言いました。
これは非常用ですよ。万一の時は、鯨の缶詰めで食いつなぐのです。僕は安心してでかける気になりました。
東京は、町の中に意外に緑が多いこと知ってますか。もちろん、ビルだらけだったり家だらけだったりするのですが、公園とかは、下手な田舎よりもだだっぴろくて驚きます。
昼間の都電は、車庫からの始発だったせいでしょうか。乗っているひとは僕ら以外にだれもいませんでした。運転手に見られると照れくさいので、後ろのほうにそっと乗車しました。
次はベンケー、べんけーです。
運転手が自分の声で案内するのも意外です。録音再生ではないんだ。ベンケーって何区にあるんだろう。
電停についても誰ものってきません。なんだか、近くの民家の壁に、稚拙とも思える絵が書いてあるだけの、誰もいない電停が、不思議でした。
さあ、次でおりますよ。次の駅は、建物の中なので驚かないように!
キミさんが解説し終えるか終えないかという瞬間に都電は、ぐぐうううっと速度を落とします。
ぐごがががががあ。。停車した駅は、なるほど天井が高い、銭湯のような駅舎付きです。
テンショウガ、高いでしょう。
ええ、高いですね。まるで駅みたいですね。
駅ですから、そうですよ。この駅には縁側があるのです。
キミさんは、駅舎の縁側に出て、座ってくれました。昔は、この駅舎は、ほんとうに銭湯だったのかもしれない。
都心の銭湯はもうからなくなったので、建物を残したまま廃業し、そのあとを都電が駅舎として買収したのだろう。僕はそう考えました。
永遠にお酒を飲んでいるかと思われたキミさんは、いつしか縁側に出て酔いをさましていました。
キミさん。僕がここにきた理由は知っていますよね。行方不明になった化粧女王をさがしているのです。
知っていますよ。でも、どうして、いなくなったひとを探さないとならないのでしょう。
それはそうなのだけど。
僕は答えに窮しました。縁側に座ったキミさんが、このまま、どんどんどんどん、小さくなってしまって、いつしか、ずっと手が届かなくなる迄、小さく小さくなって、消えてしまうのではないかと不安になりました。
その不安は、やがて適中してしまうのですが、この時は、またいつのもキミさんに戻って、僕の隣で、庭の風景を眺めるまでに、元通りに近くに来たのでした。
今から写真師に電話をすることにしました。
キミさんは唐突にそう言うと、おそろしく旧式の電話器の受話器を手にしました。
ホントウニその電話は、誰かと話ができるのですか。 できますとも。
電話器のようだけれども、小学生の時に理科の実験で作ったことがある、糸電話ではないのだろうか。
イトデンワ?なんですかそれは。キミさんは、そういいながら、電話で誰かと話をはじめました。
ここはヤマノテなので、ヤマノテ言葉で話さなケればならないので、とても大変でした。キミさんは、後日、そんなことを話していましたが、もちろん、そのときに、そんな悩みをかかえながら電話をしていたなんて、少しもわかりませんでした。
イキマショウ。 キミさんがでかけたのは、何軒かとなりにある、写真館でした。
旧式な銀判カメラが据え付けてある写場にはいると、写真師がお待ちかねでした。
やあ。あなたでしたか。おひさしぶりですね。
キミさんとは旧知の写真師のようでした。
さて、きょうは、どのような日なのですか。写真師は、記念撮影以外は撮影したくないという人なので、まず、被写体にその質問をぶつけるのだそうです。
化粧女王を探す記念の一日なのでゴザアマス。
キミさんは妙なアクセントで、理由を説明すると、写真師はおおきくうなずきながら、それはまことにケッコウでございますなあ。
感動もない仕事師の声で答えました。それからかれこれ一時間、キミさんの姿勢をただしたり、襟元をなおしたり、銀判の設定をやりなおしたりと、キばかり焦る僕の前で、えんえんと撮影を行い。
竈(かまど)はみたことがあっても、そこに火が入っているのをみたことはないでしょう。
キミさんは、僕を案内しながら、ここの家は、洋暦2003年のいまも実用で使っている。そう自慢するように言いました。
実際、竈にお釜がのっていて、御飯を炊いている家が、いまだに、この東京にあるなんて驚きです。
キミさんの昔ながらの生活ぶりにも驚いているのに、都電で少し来ただけの近くに、いまどき、こんな家があるんですねえ。いったい近ごろの東京はどうなっているんでしょう。
キミさんは、僕の感動に答えるでもなく、てにした本を読みはじめました。竈のことも、化粧女王のことも、僕は本を読むキミさんに話し掛けるのもためらわれるような気持ちで、キミさんが本から目を話す時をまっていました。
キミさんは、ひとしきり本を読むと、今度は立ち上がって外にでました。そうして、外から中の僕をみながら、話し掛けるデモ、提案するでも、おこるデモ笑うでもなく、ただじっとこちらをみているので、僕は途方にくれていろりの側にすわっていました。
囲炉裏もある、竈もある、農家のような都会の家。東京にはさまざまな建物があると聞いてはいましたが、これほどの農家は、都会には、ざらにはありません。
キミさんは再び家の中に入って来て、あがり框に腰をおろしたまま、相変わらず何かを考えているようでした。
わら屋根の。。。
キミさんの口から言葉が出ました。ワラヤネノ。わらやねの。。。
短歌のはじまりのような言葉でしたが、いつまでたってもその先は出て来ません。
僕は勝手にその先を読みました。でも、口には出さなかったのでキミさんには伝わりません。
キミさんは、縁側にしばらく座り、やがて座敷にやってきて、紫陽花が活けてある花瓶をじっと眺めています。
アジサイ、紫陽花は、どうしてここに活けてあるのでしょう。 僕はもう、化粧女王のことを忘れてもよかったのです。この時に忘れていれば、紫陽花の花瓶とともに、キミさんの口から、続く歌が、あらわれてくるかもしれませんでした。
しかし、化粧女王を探すのは、僕の使命でもあり、使命は果たさないとなりませんでした。キミさんと過ごした夏の時間の終わりが、夕暮れとともに急速に近付いていました。
六万年ぶりに火星が大接近しているものの、空は曇りが続き、なかなか見ることができません。
こうして夏が過ぎ行く季節になると、夏の始まりの、これから夏休みが始まる直前を、いまさらのように思い出すことってありませんか。
まだ、夏休みが始まる直前の7月中旬は、コレカラ先、どんなに楽しいことがまっているのだろうか。考えただけで、どきどきしたものです。
それを思い返して、小学生のような気持ちが、高まって来てくるのですが、すでに、夏は終わろうとしていて、いまさらのように夏が過ぎるのはなんだか、物悲しく思えてしまうのです。
この夏。何を思い浮かぶことを絵に描きなさい。そう言われると、いろいろあるのですが、どれかひとつだけにしなさい。
そういわれると、とても困ります。困るけれども、ひとつだけにしろというと、あの四畳半の部屋に座って、微笑むキミさんと過ごした時間のことでしょうか。 キットそれを絵に描くでしょう。きっと。
実際に、あの場面そのものは、ほんの五分とか六分とか、そんな短い時間だったのだけども。
やがて駅に行く道を。都電の電停を探していたのですが、すっかり道がわからなくなり、都電の駅にはたどりつけないままでした。
商店がいくつか密集している場所に出て、その中に、八百屋がありました。じゃがいも、たまねぎ100円均一という、安い野菜が目に止りまりた。
キミさん。夕食にこの野菜を買ってゆくのですね。
はい。そうすることにします。
では、ここでお別れしましょう。
はい。お元気で。ごきげんよう。また会う日まで。
キミさんが八百屋の店頭で、おじぎをしました。僕は敬礼して、八百屋の店頭から電停を探して、再び町に戻りました。
次の目的地は、宮崎県小林市でした。化粧女王は、そこにいるのだと、かねて放っている密偵から、連絡が届いたからです。
密偵なんかいたんだっけ。実は一人だけいるのです。
密偵ハスーから連絡があったのは、日本国有鉄道の東京発西鹿児島行きの寝台特急『はやぶさ』に乗って、博多駅に到着したときのことでした。
車掌が座席にやってきて、『駅にあなたあての電報が到着しています。駅事務室で見て下さい。至急下車してください。本列車のここでの停車時間は一五分です。再乗車する場合は、どの車両からでもかまいませんから急いで乗車してください』と告げました。
結果的には、寝台特急『はやぶさ』とは、博多駅でそのままおさらばしました。
電報の内容は、『コクテツ カシイエキ デ マツ』という短文でした。国鉄香椎駅か。
寝台特急を乗り捨てにさせてでも、通報したい内容が、密偵ハスーから、もたらせようとしているのだ。
博多駅十一番線にたまたま到着した上り普通列車で香椎に行き、国鉄香椎線/宇美発雁の巣行きの列車の到着ホームで様子をみる。この列車の行き先案内板が手書きなのにおどろいたけど。
ハスーは見なれない道具を手にして、駅のホームに座っていました。周囲をうかがうようにして、なかなか彼に近付かなかったので、ハスーは、階段に移動して、僕の到着をまっています。
誰もいないな。注意深く、それを確認してから、ようやくハスーと、連絡をとりました。
どうしたんです。おそかったですね。 東京から寝台特急で博多についたばかりなんだ。疲れた。
寝台特急?新幹線や飛行機ではなかったんですか?
シンカンセン?なんだそりゃあ。飛行機など、ばか高くて庶民にのれるはずがないだろう。キミイ
ええーどげんしたんですか?昔から来たんですか?
まあ、そのようなものだ。
だいじょうぶですか。今の時代が昭和三十年とでもいいそうではないですか。ちょっと試してみましょう。今から言う人たちは、現代で人気がある人たちなんですけど、知らない人が何人いますか?
うん。いってくれ。
モーニング娘。 浜崎あゆみ。宇多田ヒカル。中田英寿。GLAY。ベッカム 。SMAP。ゆず。松浦亜弥。。どうです。知らない人はいますか?
なんです。
大分名物の柚子です。御飯につけて食べると、メシがなんばいでちゃいける。
だめだこりゃ。。まあいいや。極秘報告をします。いいですか、一度しかいいませんよ。
あっさりと僕の正常確認をあきらめたハスーは、耳もとに口を近付けて、国鉄吉都線で宮崎県の小林駅で下車。徒歩一時間半の山中にある『日本一怪しい公園』で、化粧女王を目撃した。
http://homepage2.nifty.com/timetable/ekiben/46kagoshima.htm
駅弁のことなど、思い起こしながら、ハスーと別れて、香椎駅から再び鹿児島本線で博多駅に戻り、ちょうど入線してきた特急『なは』に乗る。途中で乗り換えが必要なのだが、少しでも先にいって、小林市に早く着くようにしなければ、化粧女王が、またどこかにいってしまうかもしれない。
めざすは、小林市である。
ということで、あすから、怪しい公園でのできごとを紹介しましょう。
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