化粧女王を探す長い旅 by 大王

2003-08-19 過去の町から脱出への巻

[江戸下町世界]

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 夢からさめる直前、どこかの廊下にキミさんがたたずんでいました。いったいどこの廊下なのか、よく思い出せないうちに、隣の部屋で、黒い電話機が鳴り響いたので、僕はいやでも目が醒めました。title0

 いまから思えば、この時に目が醒めていなかったら、どうなっていたんだろう。元の世界に戻れなくなっていたかもしれません。

化粧女王を探す旅に

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 目がさめたら、キミさんは、夢の中と同じ服を着ていました。

 「よく寝ていましたねえ」 はい、きっとつかれていたのでしょう。

 そういえば、今度の旅の目的は、化粧女王を探すことでした。

 探しに行きましょう。title3

 市内電車にのって行きましょう。都電に乗ってゆきましょう。 都電かあ。都電が走っているところは、早稲田と。早稲田と雑司ヶ谷と。あとはどこだっけ。そんなには残っていないはずだけど。

 その前に。 「鯨の缶詰めを買ってゆきましょう。途中でお腹がすくといけませんからね」

 キミさんは家を出るなり、向かいの商店にはいって、マルハの鯨の缶詰めを買い込みました。そんなにたくさん買わなくとも、缶詰めはこんなにありますよ。

 この分だと、昼も夜も鯨の缶詰めなのかなあ。いささかげんなりしました。するとキミさんは、僕の心を見すかしたかのように言いました。

 これは非常用ですよ。万一の時は、鯨の缶詰めで食いつなぐのです。僕は安心してでかける気になりました。


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