化粧女王を探す長い旅 by 大王

2003-11-30 廃虚ホテルに人影を求めての巻

[廃墟看護婦]

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 キツギ看護婦の足下が、靴下も靴も、白ではないことに気が着いたのは、この時でした。病院の規則では、必ず白の靴下と、白の看護婦シューズであることが決められていたはずです。

 怪訝に思う事はありませんでした。このときは、かつて宿泊したホテルが廃虚と化していた現実の方に驚いていたからです。

 全国には、巨大な廃虚を好んで訪ねて写真を撮影する趣味の人も多いようです。たとえば、このホテルの残骸を、インターネットで検索してみますと、すでに、訪問して写真におさめて報告している人も数多くいました。

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 廃虚を訪問する趣味の人々の間では、このホテルも、名所というわけなのです。

 ホテルの名前は『串崎ケープホテル』と言いました。覚えていたからではなく、ホテルの外壁に、かつての正式名称が、この残骸の今は唯一の誇りであるかのように付されていたからです。

 串崎という岬に位置するホテル。岬は、二方向に対して眺望が開けているのですが、もっとも突き出した岬の突端は、険しい山と樹木に遮られて、海は見えません。

廃虚の庭に階段が続く

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 キツギ看護婦を追い掛けているために、ホテルの全貌をなかなかおみせできないのが残念ですが、廃虚を訪問するのが、僕の目的ではないので、廃虚趣味の人は勘弁してください。

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 それにしても、無言で先を急ぐキヅキ看護婦の白衣が、何度も光に輝いてみえるのは、不思議なことでした。

 この日は、雨まじりの強風が吹き付ける廃虚にとっては、とても無気味な世界になっていて、ろくに太陽もなく、まるで暗鬱な北国の冬のような風景なのでした。それなのに、わずかな太陽光線を拾い集めて反射しているかのように白衣が輝いていたのです。

 『どこまで行くのですか』

 僕は内心こわくなっていました。 かつて滞在したホテルとはいえ、あの時と今とではなにもかもが違っています。

再び廃虚ホテルの奥地に

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 『キツギさん』

 何度も呼び掛けながらついてゆくうちに、一瞬だけ、僕の声が聞こえたのでしょうか。キツギ看護婦が僕を振り向きました。

 でも、僕を認めることはなく、再び、建物の内部に入ってゆきます。title6

 一度でも見失ってしまうと、キツギさんは永遠にここからいなくなってしまい、あとに廃虚に取り残された僕が、たったひとりで誰もいなくなったホテルの残骸をさまよってゆかないとならない気がします。

 そう思うと恐くなり、もう必死でキツギ看護婦の行く先をついてゆきました。

とても足が早い

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 油断していると、引き離されて、おいてゆかれそうになります。白衣が輝いているうちに、僕はもうあとを必死に追い掛けていました。

 キツギ看護婦は、プールサイドの残骸をすり抜け、いくつかの残骸の階段を超えて、ある建物の内部に入りました。


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