化粧女王を探す長い旅 by 大王

2004-01-06 生け花に心の平安を求めるの巻

冬の陽の中で

活けはじめ

 その年の正月は、暖かい日々が続いたのを今も思い出します。 どこの座敷に上がりこんだのか、よく覚えていないのですが、全員は一列縦隊となり、かけ声も勇ましく、華道師範の家を訪ねて、座敷きにあがったのでした。

笑顔で生け花

 障子ごしにかなり暖かい太陽が差し込んでいることを、僕は覚えています。全員は、花器に剣山を置いて、水を入れ、活けはじめの時間をまっていました。

 最初に僕に気がついたのは、ぴい巛さんでした。ひとりスーツ姿の彼は、僕に直接はなしかけ、その言葉を横で聞いて、よほどおかしかったのか、福うららさんが笑顔になったことを覚えています。

この花の命を

心を形に

 ぴい巛さんは、真面目な顔でこういいました。

 『この花の命を活けられたら、松翁軒のチョコラーテを一本まるごと食べてみたいと思っております』

 ショウオウケンノチョコラーテ??

 あまりの突然さに意表をつかれた僕は、何と答えてよいのか絶句していました。

添えもつけて

 華道師範が、ぴい巛さんのそばにきて指導をはじめたので、その言葉の真意を尋ねることができなくなりました。

 福うららさんに、言葉の意味を尋ねましたが、彼女は僕には気がついていないので、まったく反応がありません。

 しかし、ショウオウケンノチョコラーテは、福うららさんが花を活けながら、妙な歌を歌っているので、忘れられない。

 ショウオウケンノチョコラーテ。でんでらりゅうが、でてくるばってん、でーーられんけん、でんでられんけん、でーん、でん

 ショウオウケンノチョコラーテ。モモノカステラ、カキゾエサンガ、ギンコノニカイデ、ブッコケテ、ソバノアンシャンノ、ヒザノウエあ、よーいよい

謎な歌に惑います

厳しい指導に

 福うららさんは、さっきから、歌を歌いまくりながら生け花をしているのですが、その歌声は、僕にしか聞こえないようです。

 ほかの誰もが、華道師範でさえも、特に耳を傾けたり、彼女の歌の騒々しさを非難したりもしません。

緊張の活け込み

 みょうな歌ですねえ。福うららさん。

 僕は、言葉の意味をとても知りたいと思ったのですが、さっきの、ぴい巛さんの言葉と同じように、誰に尋ねることもできずに残念でした。

 せめて、僕に顔があったらと思うのです。

生け花は千ねんの彼方に

控えも活けたら

 できましたよ。しんねんの花が。

 はしるん、と、ぴい巛さんが、合唱しました。新年の花なんだろうなあ。みんなの言葉を聴いていると、どれもが、ひらがなのままなので、勝手に頭の中で漢字にして把握しようと思うのですが、油断すると、ぜんぶが、しんねんのはな。になってしまいます。

花は涼やか

 うつくしいものですね。僕は誰にもきこえないように、心の中で感想を述べました。

 心の中で述べただけなのに、福うららさんと、はしるん、ぴい巛さんには聞こえたのか、一斉に、僕のほうを見てきたのには驚きました。

 モモカステイラですよ。最後のラは、上顎にべろをくっつけて発音してくださいね。

 福うららさんが、そのように指導してくれました。

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