化粧女王を探す長い旅 by 大王

2000-07-03 そうして手の旅を始めた

いつも隣に

画像の説明

 バッテンさんはいなくなったわけではありませんでした。

 バッテンさん。

 語りかけても何も答えてくれません。でも、返事がないけれども、手を見ていられる。手は何も答えないけれど、いつも隣にいるのです。

画像の説明

 手の旅。。。バッテンさんは、どこにいったのかわからないけれど、これはナカナカいいぞ。とってもイイ。

 アイスカフェモカを握り締めた手は、カップを横にしても中の液体がこぼれないし、強く握っても軽く握っても、言葉こそないものの、いろいろなことを語りかけてくれます。

アイスカフェモカ

画像の説明

 アイスカフェモカはおいしいですか。バッテンさん。

 このときまでは、手だけが見えるのではなく、手の周囲に写っているいろいろな風景が、店の風景であるとか、街の風景であるとか、手のほかに、いろいろなところもいっしょに見えていました。

画像の説明

 それは、あたかも、ほんとうはバッテンさんの全身が、そこにあるのに、私が意図的に手だけに視線を集中しているようでした。

 実際には、バッテンさんは、私の隣にずっといたに違いないのです。

 しかし、見たことはありませんでした。消えてなくなってしまったバッテンさんを、隣に実在していたかもしれないバッテンさんのことを、思いながら、手しか見てはならないので、手としてのバッテンさんと対話していたのでしょうか。

手の現実感

画像の説明

 それにしても、実在していたころのバッテンさんよりも、手とともに過ごすバッテンさんのほうが、とても現実感がありました。

 手に語りかけると、手は、優雅に微笑んでいたり、少し怒ったりします。

画像の説明

 たいていの場合は穏やかでした。バッテンさんの存在を、手を通じて感じるためでしょうか、手と歩いているだけで、すれ違う人々から羨望まじりの好奇の目で見られることがありました。

 手だけになったバッテンさんとともに、市街地に出てゆくことにしました。


2000年
7月
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

侃侃諤諤