化粧女王を探す長い旅 by 大王

2001-02-07 鉄の柱に会いに行く

[鉄の柱に会いに行く]鉄の柱への道

鉄の柱への道

画像の説明画像の説明 テツノハシラに会いに行きたくないですか? 唐突に質問されたら誰だって不審に思うはずだ。僕も不審に思った。テツノハシラ?

 テツノハシラってあの鉄の柱ですか?

 そうです。テツノハシラですよ。鉄の柱に会いに行くんです。

 アイに行くのはいいですけど、それはとっても遠い場所ではないんですか。帰りの時間もあるし、あまりとおい時間をかけてまで、テツノハシラに会いたいとは僕は思わないけれど。

私は会いたいんです

画像の説明 私は会いたいんです。だからついてきてください。

 時間がないのだけれどなあ。ぼやきながらもついてゆくことにした。

 それで、テツノハシラはどこにいるんですか。 まあ、ついてきてください。

 はあ。

地下空間では十分な空気が吸えない

画像の説明 画像の説明 それにしても、あれほど会いたいといっているのに、木目さんは、すぐには地下階段をおりようとはせず。地上の空気をしばらく楽しんでいた。これからもぐる地下空間では十分な空気が吸えないとでもいうように。

さあ、いきましょうか。何をぐずぐずしているんですか。僕がすっかり油断していると、唐突に目的地に向かうたびが始まっていた。

 テツノハシラは、どこにいるんですか。テツノハシラぐらいどこにでもあるでしょうに。わざわざそこに行かないとならない理由でもあるんですか。

その夜のできごとを大きく変えてしまうキッカケ

画像の説明 鉄の柱なら、僕の会社にもある。地下3階にある。

 独り言のようにぶつぶついいながら、木目さんの後をついてゆきました。

 木目さんは一度だけ振り返り、無駄口はきかないで、テツノハシラに会いに行くときは、静かな気持ちでいきたいでしょ。そう釘を刺してきた。そのことがその夜のできごとを大きく変えてしまうキッカケになったとは、もちろん、そのときはちっとも考えなかった。


2001-02-08 地下階段を行く

[鉄の柱に会いに行く] ひとつだけ聞いていいですか

ひとつだけ聞いていいですか

画像の説明 質問があるんですが。ひとつだけ聞いてもいいですか?

 オコトワリシマス。

 木目さんはいつも微笑みながらきっぱりと拒絶する人なので、とまどってしまうのだが、拒絶されるとそれいじょうは、質問できなうkなるかというと、そうでもない。

画像の説明 ひとつの質問もだめですか?ちょっとだけでもだめですか?

 とっても小さな声で哀願してみると、突然。

 ひとつだけなら。質問の文字数は12文字以内でなら。

 微笑みながらこたえてくれる。しかし、12文字以内かあ。

画像の説明 チャンスはチャンスに違いないので、12文字以内であることを確認しながら質問する。その間にも木目さんは、階段をどんどんおりてゆくので、12文字以内に短縮しようと努力しながら階段をどんどんくだってゆくのだ。

画像の説明 鉄の柱といつ知り合ったんですか?

 文字数超過です。テツノハシラといつ知り合。。。までで終わりです。漢字変換を使った文字数節約には応じられません。

 木目さんは、相変わらず微笑みながらそう答える。

テツノハシラとは偶然

画像の説明 花火大会の夜に、早めに帰ろうと地下鉄の駅に降りたときに、「グ・ウ・ゼ・ン・に・乗・り・合・わ・せた・地。。。。」はい。回答も12文字です。

画像の説明 ええーっ。そんな。まあ、でもいいえdす。類推はできますから。グウゼンに乗り合わせた地下鉄の車内で、テツノハシラとであった。そういうわけなんですねえ。劇的な出会いとは言いがたいですね。

 レンアイに入るヒツゼンもない。

 あ。レンアイではないですから。いっておきますけど。


2001-02-09 思い出の地下鉄ではない

地下鉄にのるべき場合

画像の説明 思い出の地下鉄というわけですね。いいえ。ぜんぜん。思い出なんかないですよ。なんのきっかけにもなってません。

画像の説明 だって、鉄の柱と出会った場所なんですよね。さっきの回答は、12文字の制限外に、まだ続く部分があるので、その表現は正確ではありません。

地下鉄で会いに行く

画像の説明  はあ。釈然としないけれども、テツノハシラに会いに行くために、僕を連れてまで会おうとしているわりには、この思い入れのなさは、なんなのだろう。画像の説明

 テツノハシラは、地下鉄にもいたし、あの場所にもいるんです。

 あの場所って、どこですか。これから行く場所のことです。

地下鉄はナカナカ来ない

画像の説明 地下鉄はいっこうにこなかった。たまたまそういう時間帯だったのか。僕らがホームに着く直前に地下鉄が3台続けて発車したばかりだったのか。ともかく。なかなか地下鉄が来なかった。

画像の説明 きませんねえ。きませんから、退屈で仕方ありません。もうひとつ質問してもいいですか。

 もうだめです。

 もうだめなんですか。質問は。

 だめです。あなたは12文字を使い切っています。

 微笑みながら、木目さんが、僕の質問を断った。


2001-02-10 こんなところにあったんだ

到着前にまわりみち

画像の説明 地下鉄が目的の駅に到着したとたんに、木目さんの動きが鈍くなりました。画像の説明 どうしたんですか。のろのろしてませんか。さっきまで、あんなにキビキビ歩いていたのに。

 私は、ちょっとからかうように言いましたが、木目さんは、意に介さないようです。

 まあ、いいじゃありませんか。ゆっくり行きましょうよ。のんびりとした動作で、そこらへんの金属に触れては静電気の火花が散るのを楽しんでいます。

私は自分に十分な時間がない

画像の説明 私は自分に十分な時間がないことを思い出しました。画像の説明  私は帰りの時間を考えると、それほど自由になる時間がありません。途中で失礼することになるかもしれませんよ。

 途中でシツレイだなんて、シツレイですよ。最後までついてきてくださいね。そんなに言うから、仕方が無い。そろそろゆきましょうか。

 はい。お願いします。

時間が過ぎるのを楽しむ

画像の説明画像の説明 お願いはしたのですが、椅子に座った木目さんは、いっこうに腰をあげようとしません。まるで時間が過ぎるのを楽しんでいるかのようです。

 上着ぐらい着てくださいよ。そんなありさまでは、行こうという決意が伝わってきませんよ。

 普段、拒絶されることが多いので、このときとばかりに木目さんに強く言いました。でも、ちっともこたえている風ではない。

鏡の前にかなり長い時間

画像の説明画像の説明 立ち上がったと思うと、今度は鏡の前にかなり長い時間いました。でも、鏡を見て、髪をなおすとか、化粧を気にするとか、そんな切迫した風でもなく、まるで、鏡に映った自分を風景でもみているかのように漫然とみているだけで、なんのために鏡をみているのか、ちっとも理解できませんでした。 それは、ほんとうに会いたいものに会いに行くときに、会いに行く時間そのものを楽しむ。そういう感じにも見えました。


2001-02-11 緊張のときが始まる

いよいよ会いに行く

画像の説明画像の説明 しかし、その始まる時間も唐突におとずれました。どちらかというとにこやかに時間を過ごしていた、待っているときは、急速に過ぎ去り、木目さんの表情がとても緊張したものになったのには、驚きました。

 声をかけるのも遠慮したくなったのです。そこからさきは、私は隣に並ばず、先をゆく木目さんのずっと後から気づかれないように尾行する、そういう感じで歩いてゆきました。

空中の廊下を行く

画像の説明画像の説明 空中の廊下のところに差し掛かるときは、このままついていってよいのか、迷いました。私は、別に立ち会う必要もないのではないか。そう思ってついてゆくことに逡巡しました。

 でも、いちおうついてゆくと約束したしなあ。しかし、約束そのものさえ忘れているかもしれないではないか。

天麩羅や店頭で

画像の説明 空中廊下のつきあたりに天麩羅やがありました。すでに閉店時間でしたので、店内のあかりは暗くなっていましたが、そこで、木目さんが立ち止まりました。

 テツノハシラは、ここにいるのかな。質問しようと思いましたが、私は、質問に必要な12文字をつかいきっていることを思い出して質問できませんでした。


2001-02-12 テツノハシラ

テツノハシラに語りかける

画像の説明画像の説明 ここですか。テツノハシラって。なんのへんてつもないエレベータホールの柱ではないですか。

 木目さんは、感動しているのか、していないのか、よくわかりませんが、とりあえずは、とてもリラックスした表情でいます。陶酔しているようでもありません。

 基本的には普通の表情です。

質問してみたい衝動に

画像の説明画像の説明 もっともっと劇的な対面とかできないんですか。もっとなにか運命的な出会いみたいな、もっと、なんというかなー、すごいかんじで。

木目さんは、無言でした。質問してもいいのだろうか。質問してみたい衝動に駆られました。

 テツノハシラは、いつからここにあったんですか。建物が建ったときなんていう答えはなしですよ。木目さんにとって、いつからこの柱に会いに行くことが特別なものとなったのか。そういう質問なんです。


2001-02-13 木目さん

テツノハシラに触れた木目さん

画像の説明画像の説明 テツノハシラに触れた木目さんは、テツノハシラに触れる前より、何かが大きく違った気がします。あの場所にあるテツノハシラは、特別な力があって、知っている人は、月に2度はでかけるそうです。

 私は、木目さんから場所を教えてもらったにもかかわらず、一人でテツノハシラに会おうとは思いません。

テツノハシラの素晴らしい力

画像の説明画像の説明 テツノハシラの素晴らしい力をみなさん、知っていますか!街頭で絶叫したくなることがあります。最近、特にそう思います。

 なにもかも、ほんとうのことを話して、テツノハシラに向かってすべてを告白してみたい。そう思う気持ちを、必死に我慢して生きています。

 木目さんのように、テツノハシラに会いに行けたらと思うのですが、それはできないようです。


2001-02-14 テツノハシラ以後

テツノハシラの威力

画像の説明画像の説明あの日、あれほどついてきて欲しいといった私に、テツノハシラとの会見後、木目さんは何も語らないまま、帰路につきました。 私も、木目さんに何も語ることはしませんでした。

 木目さんは、テツノハシラと会い、私はその光景を見た。会うのと見るのとでは決定的に違う何かがあったのです。

私はテツノハシラの力を今では信じています

画像の説明画像の説明 どこにでもあるビルのエレベータホールにある、単なる鉄の柱に、何かの力がこもるなんてことは、信じることができません。

 人間が作った無機質な物体にすぎないではありませんか。

 木目さん。木目さんだって、ほんとうはそう思っているはずです。

 しかし、あの場所で目撃した、あの時間帯のテツノハシラは、他とは違う何かがある。これを書いているうちに、存在感そのものが、背後にしっかりと迫っているのを感じることができます。

 テツノハシラ様!そう呼びたくなるような、気持ちの昂ぶりを抑えることができません。

木目さんは、たえず微笑んでいました

画像の説明画像の説明 私の帰る時間が迫っていました。木目さんは、眼前に私がいないかのように、私ではない誰かに、きっとそれはテツノハシラのために、たえず微笑んでいました。

 うれしそうです。木目さん。どうして一人で行かなかったんですか。私が同行する理由はひとつもなかったはずです。

 しかし、現実には、私は木目さんに同行してテツノハシラの所在を知ることができたのです。木目さんは、なんのために、私に同行してほしかったのか。

 今となっては、まったくの謎です。木目さんは、それきり私からの連絡に応じなくなり、なにごともなかったかのように、私のありふれた日常が再び始まったのでした。


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