化粧女王を探す長い旅 by 大王

2001-03-26 あ、た、し、は。い、や、で、す、か、ら。

[芽衣殿足袋]

画像の説明 おやじギャグ丸出しのような誤変換だった。暫定的に表題をつけようとしたのに、ありえないような完璧なまでの恥ずかしさで、こんな変換が出てしまうなんて。画像の説明 たぶん僕のせいではない。以前にパソコンをつかっていた、この座席の人物が、メイドではなく、芽衣殿という書き出しで文章を打っていなければ、こんなとんでもない不自然さで変換されるはずがないのだ。

 仮の表題を見せて検討してもらったとき、メイ様は、とても冷ややかな表情で僕に告げた。

 あ、た、し、は。い、や、で、す、か、ら。

悩む旅でもある

画像の説明 いやだといわれても、真実、作為なしに変換してきたのだから、どういやだといわれても、こまる。僕はとても消極的に抗議をしたが、あ、た、し、は。い、や、で、す、か、ら。の前にはまったくの無力だった。画像の説明 嫌な理由のひとつが、あなたが私の大切にしている服装に対して、メイド喫茶を連想したことが明らかな、その変換のもとになった、あなた自身の低俗な思考に我慢ができません。だからいやなのです。

独自基準がある

画像の説明 すみません。メイさんはとても怒っているようだった。しかし、表情を見る限りは、怒っていないようでもあるので、とにかく、金曜日の夜に、小さな旅を続けること自体はできた。

画像の説明 夜の駐車場には、誰も人影がいない。うすぐらい照明のもとで、メイさんは、一人の時間を楽しんでいるようだった。

銀太郎

画像の説明 いまにしておもえば、銀太郎の看板の前や、室外機のすきまにコートを着てじっとしてるメイさんと向かい合っていた、このやすらかな時間のことが、懐かしく思い出してくる。

画像の説明 メイさん。今夜は時間がいくらでもある。そうおっしゃっていましたね。4時間でも5時間でも時間がある。そう話していましたが、その後、急激な気分の変化の結果。旅がたったの1時間2分で終えてしまうことは、このときは考えてもみなかった。


2001-03-27 芽衣殿足袋2回目

[芽衣殿足袋]

画像の説明 隙間や狭い空間が大好きなんです。ダイスキナンデス。ダイスキなんですよ。 メイさんは、何度もダイスキを繰り返した。室外機の間とか、ビルの壁面の柱と柱の隙間に設置されていた公衆電話のボックスとか。たしかに、狭い空間を見るとメイさんは、かならず入り込んだ。

画像の説明 携帯電話の世の中になってから、公衆電話は、どこに消えていったのでしょう。あれほど、街頭満ちていた、ガイトウニミチテイタ公衆電話機は、いまごろ、どこかの倉庫に集められて、倉庫の中で破砕されるのをまっているのでしょうねえ。

メイさんのなぞ

画像の説明 公衆電話機の中に、かれこれ30分はいたでしょうか。僕がいっしょにはいるには狭すぎるので、寒い中を僕は一人でメイさんの気が住むまで外で待っていた。

画像の説明 どこからと電話連絡が通じたのだろうか。メイさんは、公衆電話ボックスを出てくると、きびきびと歩き出した。アルク速度はかなり速い。

エレベータを歩いているうち

画像の説明 メイさんはエレベータに乗りました。僕にはエレベータの速度がとても速くかんじられました。飛び乗らないと乗れないような高速でエレベータの階段がどんどんどんどん上昇しているのです。

画像の説明 うまくのれなかったら、どうなってしまうのか。とてもどきどきしました。乗りそこなって倒れたら、そのまま上部に行ってしまい。運が悪いとうつぶせになったまま、顔や指がエレベータの上部のジガジガのところで食いちぎられたらどうしようか。

危険が満ちている

画像の説明 メイさん。そんなに急がなくとも、いいではありませんか。今夜は時間があるんでしょう。

画像の説明 メイさんは、一度も振り向かないままでエレベータに乗っています。どんな表情をしているのか、よくわからないので、とても不安になりました。


2001-03-28 芽衣殿足袋3回目


2001-03-29 芽衣殿足袋4回目

[芽衣殿足袋]

画像の説明 エレベータは突然、地上に出て、川のそばに出ました。夜の川は、周囲の街灯を反射していて、水が鏡のようにも見えます。

画像の説明 僕がやっとの思いで、追いついてきたとき、メイさんは、おばあちゃんのお下がりという、昭和40年代の純喫茶の制服を着ていました。

真実のメイド

画像の説明 メイドブームには憤慨しているんです。許せません。

 メイさんがあまりにも緊迫した声でそう宣言しますので、僕は、一瞬びっくりしました。先週の木曜日に、ひそかにメイドカフェにでかけたことが、メイさんにばれているのではないか。やばい。ばれたらいやだ。

画像の説明 しかし、ばれているのかどうか、不明ですので、やぶへびになってもいけませんから、ここはメイさんの意見をいうものを聞いてみたいと思います。

質問があります

画像の説明 いまお召しになっているメイド服は、最近のものではないのですか。

画像の説明 違います。 通販で購入したものではないのですね。 違います。 メイド喫茶従業員の支給品でもないのですね。

 違います。

このメイド服は

画像の説明 昭和40年代のことです。時代は、歌声喫茶全盛時代だった、昭和30年代前半の流れをいまだ濃厚にひきづっていました。

画像の説明 若い世代にとって、喫茶店こそは、音楽を愛し、談論を交わす社会的な社交場だったのです。喫茶店は、われわれ祖母の時代には、時代の聖地としての存在だったのです。

 長い話になりそうだな。僕は覚悟しました。祖母の精神が降臨しているのかもしれない。

 うっとりと陶酔状態のメイさんをみながら、彼女の祖母の時代のことを思い浮かべました。

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2001-03-30 芽衣殿足袋6回目

画像の説明 純喫茶は、そういう社会の中に出現した喫茶店の聖地中の聖地でした。純然たる喫茶であり、その至高感は、現在のカフェとは、一線を画するの感がありました。祖母はよく、小さい私に、そういって聞かせていました。

画像の説明 祖母が純喫茶の従業員として働いた時間は、期間にして1年にもなりませんでした。おもいのほか、短い時間だったのです。

 純喫茶の記憶は、私自身にはありませんが、祖母の言葉を通じて、私の頭の中には、残像のように体験したことがない記憶とでもいうべきか、体験していないので記憶ではないのですが、今も思い浮かべることができるのです。

純喫茶の音楽風景

画像の説明 殿方は、私の手だけを見ていました。あの時代。純喫茶にソファは、体が沈むふかふかのソファになっていて、そこでゆっくりとした時間をすごす人が多かったです。

画像の説明 一人で来ている方の大半は男でした。タバコを手に、何時間も本を読んでいたものです。コーヒーを飲みながら、音楽を聴いている方もいました。

手だけを見つめる

画像の説明 ウエイトレス。われわれメイド服の女子従業員は、ウエイトレスと呼ばれていたのですが、今でいうメイド風の制服を支給されていました。

画像の説明 この制服が着たくて、校則違反を承知でアルバイトする女学生もいました。私のように、社会人になってから、好奇心で働く人もいました。男性客の視線は、私の手に集まっていました。

直視はない。手に集中する視線

画像の説明 現代でしたら、メイド服を着ている私のことを、どの客もぶしつけに、見てくるはずです。 カオとか、足とか、体つきとか。あなたが、メイド喫茶で、そうしているように。

画像の説明 えええー。やっぱりばれているのか。僕はどっきりとしました。 確かに現代では、メイド服を着た本体がどのような方なのか、気になると、さりげなさを装うがための、異常な不自然さで、メイド服の本体をちちらちら、じろじろと、なにがなんでもみる。

 また、みるまでもなくメイドの方が腰をかがめて、みせてくれる。


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