化粧女王を探す長い旅 by 大王

2000-06-14 手の旅の始まり

手の旅に迷い込む

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 変な場所に紛れ込んでしまった。  いったいどんな経路で、ココにやってきたのか、ちっとも思い出せないのだ。

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 この場所にやってきて、「手の旅を始めませんか」。そう言われたとき、何を意味するのか、これまた、さっぱり理解することがでなかった。

 手の旅って何ですか?

 僕の切実な質問。。。。どのくらい切実かというと、もう、芝生の上で蓑虫になるくたいに切実なのに。。。。

教えてくれない

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 マダ始まってはいないので、教える事ができません。

 では、どうやって始まるんでしょう。それはわからない。自然に始まる事もあれば、無理に始めないとはじまらないこともあるそうなんです。

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 よくわからないままだった。

 廃屋の屋上は、前の持ち主の庭園がそのままになっていて、隣のビルがみえるのだが、そこにはよどんだ風が吹いていて、僕らの頬をなでてゆくたびに、空がどんどん低く降りてくる。

手の旅への入り口

画像の説明 いったい、ここはどこなんですか。どこなんでしょう。

 廃屋の屋上だということは、わかるのですが、この場所にどうやってきたか、さっぱり覚えていないのです。

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 それは、あなたが、かってに鉄条網を乗り越えて入ってきたからですよ。

 鉄条網からではなく、入り口から入れば、そんなわからないことにはならなかったはずなのです。

 そうだったのか。早く聞いておけばよかった。

 これが原因で手の旅に出てしまうことになろうとは。

 このときにはちっとも考えなかったのだ。


2000-06-15 ここはどこなんだろう

ここは、どこなんだろう

画像の説明 ココハドコナンデスカ?ビルの屋上です。

 ビルの屋上にある廃屋の庭園とでもいうのがセイカクなのですが、とりあえずは庭園です。

 でも、人が来なくなって久しいので、いまは荒れつつあります。管理人がたまにやってくるのですが。

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 管理人はあなたではないのですね。私ではありません。管理人は、一日に1どここにやってきて、芝刈り機で芝を手入れします。

 入念な手入れとは言いがたいですね。

 見る人もいませんから、入念である必要もないのでしょう。でも荒れ果ててはいないのは、管理人のせいですね、おかげです。

僕がやってきた経路

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 あなたがやってきた経路なのですが、信じられない事に、ココカラやってきたのです。

 この鉄条網を乗り越えてきたというのですね。

 そうです。鉄条網を乗り越えてきました。

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 血だらけにもならず、怪我もせず。平然とこの鉄条網を乗り越えて庭園に入ってきたのです。鉄条網にからまったことはありますか?

 ありませんよ。あったとしたら、ここにこうして元気でいるはずがない。

 皮膚が破れて痛いですよ。たんなる怪我よりも痛いです。どうして怪我もしないではいってきたものか。。。。

考え事をする

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 それを考えると、いろいろ考え始めると、どんどんどんどん、思いつめてしまい。現実のことなどは、どうでもよくなって、どういう風にここを乗り越えてきたのか、その瞬間をみていなかったのが、とても残念なのです。

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 当の本人は、平然としたものです。自覚がないままに、ここに来ているのですから。それよりも、どうしてここにいるのか、ちっともわかりません。

 手の旅に出ましょうか。いっしょに手の旅に!

 手の旅ってなんなんですか?どこにでかけられるというのでしょう。周囲を鉄条網に囲まれている、この庭園を出て。

 手の旅に出る機が熟したら、それからさきは、手の旅なのです。もうじきです。旅に出発するのは。さあ、準備を始めてください。


2000-06-17 バッテンさんは誰なんだ

バッテンさんの謎

画像の説明 この庭の周囲は、鉄条網に囲まれていてどこからも出入りできません。

 あなたが入ってきた場所もビルとビルの谷間になっているので、こちらのビルの壁面をはいあがってこない限り、入れるはずがないのです。

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 煉瓦の高い塀があるでしょう。ここからは、どこも眺める事ができません。

 それで、あなたはいつからここにいるのですか。

 コンゲンテキな質問をぶつけたところ。バッテンさんは、そうそう。

 バッテンサンという名前を突然思い出したので、唐突ですがバッテンさんと以後お呼びすることにしますが、バッテンさんがいつからここにいるのか、どうしてこんなにも平然としているのか、不明なことを質問したばかりでした。

聞かないで下さい

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 私のことは聞かないで下さい。

 どうしてですか。

 どうしてですか、という質問もお断りです。

 何も聞けないというわけですね。

 そうです。私に関する事は何も聞いてはいけません。

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 それでは、質問を変えましょう。私はどこに行こうとしているのですか。私のことを知っているんだったら、教えてください。

 それは推測することができます。手の旅に出るのです。手と旅をしたことがありますか。手の旅を。

 いいえ。ありません。一度もないです。そもそも手の旅というのが、理解できませんが。

花も咲くし葉も茂る

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 手の旅に行くためには、ここの庭に気に入られなければなりません。

 庭に気に入られるというのは、どういうことなのでしょう。ちっとも理解できません。

 この庭には秘密があるのです。どこからも入れないし、どこへも出てゆけない。入ってきた人は皆無です。あなたを除いては。入ってきたということは、手の旅に行ける資格があるということなのです。

 こうしてしゃがんでみてください。

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 ガラス戸の入り口があるではありませんか。ここから外に出ましょう。

 出ても無駄です。この扉はどこにも通じてはいないし。ただのガラス戸があるだけです。階段もありますが、どこにも通じてはいません。

 ガラス戸の向こう側には、階段が見えていました。そこから降りてゆくと、どこかに抜けられそうでしたが、バッテンさんが押しのけてドアを開ける勇気はありませんでした。


2000-06-23 消えた人々はどこに?

[手の旅]

画像の説明 ここには、少し前までたくさんの人がいたと思うのです。

 バッテンさんが、独り言のようにいうので、返事をしてよいものかどうか、バッテンさんの言葉が続くのを待ちました。

 でも、ちっとも続きの言葉を言わないので、私は困ってしまい。困ってしまったというよりも、その続きがとても気になったので、耐え切れなくなって質問しました。

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 たくさんいたという、その人々はどこにいったのですか?

 分かりません。

 では、どうしていなくなったといえるのでしょう。

 それはみたらわかることです。

 廃墟の庭園を改めて見渡しました。どこにも人がいた痕跡がありません。いったいどこだろう。私は、だんだん息が苦しくなってきました。

 すみません、わからないのです。

 だめです。もっと観察しないと。そんな甘い観察ではだめですよ。もっとよく見るんです。すぐにわかります。注意深いひとなら、ここに入ってきたとたんにわかったことでしょう。

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 廃墟の庭園のすみずみを注意深く眺めました。

 バッテンさんは、満足そうでした。

 注意深く眺めるのです。でも、注意を一箇所に集中しないようにしてください。一箇所だけではだめです。もっと、こう、同時に、ざああっと眺めてください。何か違うところがあります。

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 分かりました。一ヶ所にとらわれないように見るのですね。

 そうです。それでいいですよ。そんな感じです。

 バッテンさんは、私の視線を避けるようにガラス戸の前にたったり、遠くから私と視線を合わせないように努力していました。

 まるで、声に出したり、視線を合わせたりして、答えがみつかってしまうのを恐れているようでした。

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 あああ!

 私は思わずでかい声を出してしまいました。声は、廃墟の庭園を取り囲むビルの外壁に反響して、そのまま戻ってきました。

 見つけました。

 バッテンさんが、私が見ている視線の先を、遠くから重ねて、そうして、その先にある庭園のテーブルに歩み寄りました。椅子に座ったバッテンさんは、まるでずいぶん昔から、この椅子に座っているようでした。

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 テーブルセッティングがしてあり、ティーカップも空いてあるしお菓子を食べた痕跡があるけれど、人はここには誰もいなかったはずなのです。

 しかし、カップにはホコリは積もっていないので、つい最近、このカップが置かれたことは明白です。

 あの。

 私はバッテンさんに尋ねました。

 私たちが、このお茶を飲んだのでしょうか?


2000-06-27 廃墟庭園からの脱出

沈黙したバッテンさん

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 バッテンさん。

 バッテンサン?ばってんさん。

 バッテンさんが急に黙り込んでしまいました。欝状態にでも入ったのでしょうか。

 問い掛けても何も答えてくれないので、すっかり困ってしまいました。

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 バッテンさん。どうして黙っているのですか。

 それとも何かを考えているというのですか。いまさら何を考えているのでしょう。いろいろと語りかけたのですが、何も答えてくれません。

 じっと宙を見て物思いにふけっているようなので、これ以上ぢゃまをしても迷惑と考え、何も語りかけず、そのままにすることにしました。

鉛色の空の下で

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 空を見上げると、陰鬱な冬の空でした。

 鉛のように重たく、という表現をよく使う事がありませんか。まさに空は鉛色です。重たく、バッテンさんの上に乗りかかっているような、重量感あふれる空の色なのです。

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 バッテンさんの瞑想は、さらに続いています。

 気にしても仕方がないので、そのまま、バッテンさんの横顔やら、下からの表情とか、正面からの様子とかを、観察するように眺めつづけていましたが、バッテンさんは、こちらの視線をまったく気にすることもありません。

唐突な終わりがやってくる

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 バッテンさんは、このまま、廃屋の庭園で生涯を過ごすつもりかもしれない。

 そう思うと、自分なりの脱出の方法を、バッテンさんに頼らずに、見つけたほうがいい。絶対にそうだ、見つけたほうがいいんだ。ついつい力が入ってきます。

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 指をぐううっと内側にして、ちょうど、拳骨をにぎしりめるように力をこめて、ケツイしたときのことでした。

 さあ、そろそろイキマショウ。ここを出て、さっさとここを出て、イキマショウ。イカナイト。烏賊ナイト。

 唐突にバッテンさんが、発言したので、いささか驚きました。

 イカナイトって、どこに?どこからか出られるというのですね。

 バッテンさんは、自信に満ちた表情で。ありますとも、そんなことは最初から分かっていました。私が入ってきたところですから。


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