[手の旅]

手の旅に迷い込む

　変な場所に紛れ込んでしまった。　　いったいどんな経路で、ココにやってきたのか、ちっとも思い出せないのだ。

　この場所にやってきて、「手の旅を始めませんか」。そう言われたとき、何を意味するのか、これまた、さっぱり理解することがでなかった。

　手の旅って何ですか？

　僕の切実な質問。。。。どのくらい切実かというと、もう、芝生の上で蓑虫になるくたいに切実なのに。。。。

教えてくれない

　マダ始まってはいないので、教える事ができません。

　では、どうやって始まるんでしょう。それはわからない。自然に始まる事もあれば、無理に始めないとはじまらないこともあるそうなんです。

　よくわからないままだった。

　廃屋の屋上は、前の持ち主の庭園がそのままになっていて、隣のビルがみえるのだが、そこにはよどんだ風が吹いていて、僕らの頬をなでてゆくたびに、空がどんどん低く降りてくる。

手の旅への入り口

　いったい、ここはどこなんですか。どこなんでしょう。

　廃屋の屋上だということは、わかるのですが、この場所にどうやってきたか、さっぱり覚えていないのです。

　それは、あなたが、かってに鉄条網を乗り越えて入ってきたからですよ。

　鉄条網からではなく、入り口から入れば、そんなわからないことにはならなかったはずなのです。

　そうだったのか。早く聞いておけばよかった。

　これが原因で手の旅に出てしまうことになろうとは。

　このときにはちっとも考えなかったのだ。