化粧女王を探す長い旅 by 大王

2002-05-17 発汗で行き倒れる

[夏の日]水を求めてくるぐるぐるぐる

画像の説明画像の説明 傍らに車が何台も何台も通り過ぎた。あの車内にはエアコンが効いていて、汗を流すこともなく、アクセルを踏んで通過しているのだ。

 僕も車できていれば、こんなに遠い距離を炎天下に水を求めて歩くこともなかったのに。一歩ゆくたびにとても後悔した。スーパーがどのくらいの距離にあるのか、事前に聞いておくんだった。いまさら元には戻れないし。

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 もうだめです。置いていってください。でもスーパーで水を買って戻ってきてください。冷子さんお願いします。僕はもうだめです。

 その場にはたりこんだ。熱射病かもしれない。直射日光と路面の輻射熱の挟み撃ちにあって、体感温度はかなり高い。体の水分が蒸発してしまった。

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 残念ですねえ。いっしょにスーパーに行きたかったのに。冷子さんは笑顔で落胆を口にした。

 なんと言われようと、僕はもうごけないよ。それに僕のズボンは失禁したように汗でびしょししょだ。とてもスーパーなんかに入ってゆけないではないか。

 冷子さんは、僕の惨状をじっとみていたが、微笑むばかりで特に嫌悪感を持っていないのが救いではあったけど、僕は正直、こんなずぶぬれのような下半身で、冷子さんの隣を歩くわけにもいかないと思っていた。

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 その後、どうなったのか、実のところ分からない。急激な脱水症状のせいで僕は意識を失ったようなのだ。これから後のことは、冷子さんが夢として出現してきた空想のような気もする。

 冷子さんは、涼しげな南方の島の建物の内側にいて、水を手にして微笑んでいた。

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 水をください。水をください。その水を。僕は懸命に叫ぶけどその声は届かず、冷子さんは、水をもてあそぶようにグラスの中でワインかなにかのようにぐるぐる回転させている。

 あれから何年になるのだろう。あの時の道端に倒れたままの僕は、時空を越えて何度も冷子さんの前に出現して、記憶をつぎはぎにしながら、どんどんつなげてゆくことができるようになった。

 今では、僕は死んでいるのか、生きているのかそれさえ分からない。

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