書籍

『木管サラダ』 山崎純治

『木管サラダ』
山崎純治

四六変形、並製、96ページ 
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-521-2 C0092

山崎純治の第六詩集


木管サラダ

ザクザクちぎったレタス大盛り
粗塩とオリーブオイルを振り
レモンを絞って
ハムとチーズを添えると
食卓が目を覚ます
第三楽章アダージォ
オーボエの主旋律が流れ
十三管楽器のセレナード
湧いてくる音楽を楽譜に写しただけ
素早く五線を走る手の
伸ばした指先から広がる
八月の朝
広がる白紙の向こうから
細い影が近づいてくる
まだ書かれていない海峡や路地の
明るい空白から
どうやってたどり着いたのか
食卓に席を用意して
何も聞く必要はない
覚束ない足取りで
昔の顔を取り戻そうとはにかむ
影に呼びかける
さあ、食べよう
サラダは静かになり
水滴が光るガラスの器
木管たちは新たに息を吹き込まれ
ようやく帰ってきた
あなたを待っている

 

モーツァルト 十三管楽器のためのセレナード


【著者プロフィール】
山崎 純治(やまさき じゅんじ)
第一詩集『夜明けに人は小さくなる』(一九九七年 ふらんす堂)
第二詩集『完璧な通勤』(二〇〇七年 ミッドナイト・プレス)
第三詩集『通勤どんぢゃら』(二〇一一年 思潮社)
第四詩集『異本にまた曰く』(二〇一四年 書肆侃侃房)
第五詩集『アンダンテ、休止符連れて』(二〇一八年 書肆侃侃房)