『二重のまち/交代地のうた』
瀬尾夏美
四六判、並製、256ページ
定価:本体1,800円+税
ISBN978-4-86385-449-9 C0095 2刷
装幀 成原亜美
装画 瀬尾夏美
僕の暮らしているまちの下には、お父さんとお母さんが育ったまちがある
津波による甚大な被害で街が跡形もなくなった岩手・陸前高田市。震災後のかさ上げ工事で約10mの高さの新しい地盤が築かれた。
このことに着想を受け、著者が綴った冊子「二重のまち」は住民たちに愛唱された。
「交代地のうた」と現地での日記(2018~20年)とともに書籍化。
津波に流された町の地面の下に、静かに、しかし厳然として、
かつての町が横たわっているのだと語る瀬尾さんの文章に、
わたしは灯される明かりを見る思いがしたのでした。
────────小野和子(民話採訪者)
2021年2月下旬全国書店にて発売。
【著者プロフィール】
瀬尾夏美(せお・なつみ)
1988年、東京都足立区生まれ。宮城県仙台市在住。土地の人びとの言葉と風景の記録を考えながら、絵や文章をつくっている。2011年、東日本大震災のボランティア活動を契機に、映像作家の小森はるかとの共同制作を開始。2012年から3年間、岩手県陸前高田市で暮らしながら、対話の場づくりや作品制作を行なう。2015年宮城県仙台市で、土地との協働を通した記録活動をする一般社団法人NOOK(のおく)を立ち上げる。現在も陸前高田での作品制作を軸にしながら、“語れなさ”をテーマに各地を旅し、物語を書いている。ダンサーや映像作家との共同制作や、記録や福祉に関わる公共施設やNPOなどとの協働による展覧会やワークショップの企画も行なっている。参加した主な展覧会に「ヨコハマトリエンナーレ2017」(横浜美術館・横浜赤レンガ倉庫、神奈川、2017年)、「第12回恵比寿映像祭」(東京都写真美術館、東京、2020年)など。単著に『あわいゆくころ 陸前高田、震災後を生きる』(晶文社)があり、同書が第7回鉄犬ヘテロトピア文学賞を受賞。文学ムック「ことばと」vol.2 で初小説「押入れは洞窟」を発表した。
掲載情報
《岩手県陸前高田市。嵩上げによる復興工事は、「かつての町跡が失われていく過程」でもあった。その一連の出来事を〝第二の喪失〟と呼ぶ土地の人もいる》
《復興工事と引き換えに古里が消えていく喪失感に苦しむ人々を目の当たりにする。古くから現代に語り継がれる民話をヒントに、かつての街を想像してもらえるように物語を編んだ》