書籍

『流』 桜川冴子

ユニヴェール20
『流』
桜川冴子


ISBN978-4-86385-594-6 C0092 
定価:本体2,100円+税
四六判変形、並製、160ページ

装画:田中千智


水俣を離れ続けてほーれ、ほう流民の舟にあれば歌へり

流――水俣を離れて50年。
ふるさとの家はなお水俣にありて歌い続ける著者のこれまでの5冊の歌集から抄出した選歌集

 

【収録歌より】

頼りない湯豆腐のような君なれば生姜のように座ってあげる
沈黙の会議はつづく 微笑みてをれど開かぬモナリザの唇
大宇宙つくり給へる手を想ふまつ白な雪を転がしながら
言葉より生れたるやうにひいふうみいひいふうみいと丘をゆく蝶
古池や 蛙は何匹ゐるのかと言ひあつた日々よ欠席に○をす


【著者プロフィール】
桜川冴子(さくらがわ・さえこ)
1961年、熊本県水俣市生まれ。
現在、福岡市在住。大学准教授。
「かりん」会員、馬場あき子に師事。
これまでに歌集『六月の扉』、『月人壮子』、『ハートの図像』、『キットカットの声援』、『さくらカフェ本日開店』の5冊を刊行。他に現代短歌文庫『桜川冴子歌集』がある。
歌書は『馬場あき子と読む 無名抄』(共著)、『短歌でめぐる九州・沖縄』(編著)がある。筑紫歌壇賞をはじめ多くの賞の選考に携わる。博報賞、福岡市文学賞、福岡市文化賞等を受賞。
 

 

ユニヴェール

新鋭短歌シリーズ、現代歌人シリーズが生まれ、
短歌世界は思いもかけない方向にひろがりをみせている。
そして今、新しいレーベルが生みだされる。

ユニヴェールとは、短歌の壮大な宇宙。
これからもきっと、新しい歌人との出会いが待っているにちがいない。

書評・掲載情報

2023年10月11日 西日本新聞 「故郷 水俣を詠んでいく決意」 著者取材=川口安子記者

《これまでの歩みを川になぞらえ、50年前に離れた故郷、水俣に源流を見いだした。短歌とは何か。これからどう生きていくのか。歌人の覚悟がにじむ一冊となった》

2023年11月2日 熊本日日新聞 「離れてなお水俣を生きる」 記事=澤本麻里子さん

《水俣を離れて50年。今もなお故郷から続く流れの中にあり、「水俣を生きる私でありたい」と願いが込められている》

2023年11月4日 読売新聞夕刊 短歌とことば「詠み手を立ち位置 歌に力」 評者=梶原さい子さん

《今回の選歌で、「水俣」への心が、よりくっきりと浮かび上がった》《もうひとつの大きな主題、「信仰」においても、アンソロジーとなったゆえに、より明瞭に伝わるものがあった》