書籍

『地獄谷』 日置俊次

ユニヴェール8
『地獄谷』
日置俊次

四六判変形、並製、160ページ 
定価:本体2,000円+税
ISBN 978-4-86385-336-2 C0092

装画 権藤凱曉
装幀 宮島亜紀

うろこ雲ああ鱗ぐもうろこぐも宇宙より龍は白くて青し

台北の地に、霧のように立ち昇るドラゴン
路地を行き、雨に打たれ、谷に降りると
湧き出してくる歌に搦めとられる

2018年9月上旬全国書店で発売。

著者プロフィール

日置俊次(ひおき・しゅんじ)
1961年、岐阜県生まれ。東京大学文学部卒業。サンケイ・スカラシップ奨学生、フランス政府給費留学生に選ばれ、フランスへ留学。東京大学大学院を経て、東京医科歯科大学に専任講師として着任。日本学術振興会海外特別研究員に選ばれ、再び渡仏。パリ大学にて研究に従事。現在、青山学院大学文学部教授。在外研究員として、台湾大学で研究に従事。馬場あき子に師事し、歌誌『かりん』編集委員。第一歌集『ノートル・ダムの椅子』で第50回現代歌人協会賞受賞。東京都在住。

5首

龍たちがこんなに多くざわめきてわが胸そこに波紋ひろがる

台北はいつも雨なり雨降ればわがのどはつひに渇きはじめる

ドラゴンの燃ゆる鱗と呼ばれたる赤き実を胸に抱きて帰る

濛々と湯気乱れたりわが身またひき裂かれほそくからまりあひぬ

みなどこへ消えむとするか地獄谷の湯気なるわれに絞め殺されて

【書評】

岐阜新聞(2018年10月20日) 評者=林進一さん

《絡み合う熱帯植物のように混沌、極彩の世界を短歌で再構築した“アジア歌集”ともいえる濃密な香りを放っている。〔……〕異文化との遭遇で生み出された短歌表現と歌集の醍醐味を味わうことができる》

 

ユニヴェール

新鋭短歌シリーズ、現代歌人シリーズが生まれ、
短歌世界は思いもかけない方向にひろがりをみせている。
そして今、新しいレーベルが生みだされる。

ユニヴェールとは、短歌の壮大な宇宙。
これからもきっと、新しい歌人との出会いが待っているにちがいない。
http://www.shintanka.com/univers