歌集 ニューヨークの唇
蝦名泰洋
編者 野樹かずみ
定価:本体2,000円+税
B6版、並製、192ページ
ISBN:978-4-86385-579-3 C0092
月を追う途中の子どもにあいさつをさよならみたいな青いハローを
流星のように去っていった蝦名泰洋の
最後の短歌とメッセージ
闘病のすえ、両吟『クアドラプル プレイ』の友・野樹かずみに託した遺稿をもとに、多くの声援を受けて編まれた歌集。
歌集『イーハトーブ喪失』も収録
【収録歌より】
落ちている海かと思うあおむけの君がまぶたをひらいた瞳
抱きあげるするとわたしも何者かに抱きあげられていることを知る
夕焼けがより濃い席で答えなき答え合わせを待つ女の子
この鍵はどこのドアにも合わないが永久があるから失くしたくない
全校の運動会に人が消えひとりで踊るオクラホマミキサー
【著者プロフィール】
蝦名泰洋(えびな・やすひろ)
1956年青森県生まれ。
あるとき吉岡実の『詩を書きたい人は短歌を勉強してみるといい』という言葉に触れ、短歌を書くようになる。
1993年沖積舎より歌集「イーハトーブ喪失」出版。1994年伊丹イタリアの筆名による私家版で詩集「カール ハインツ ベルナルト」出版。
2021年7月26日 永眠
書評・掲載情報
2023年7月26日 東奥日報 「間合いに立ちのぼる寂しみ」 評者=小山内弘海さん
《距離のある言葉と言葉、事や物や形象の唐突な配置、それらの隙間に立ちのぼるいわれなき寂しみの霧のようなもの》
2023年8月15日 デーリー東北 「息づく「永遠に清冽ななにか」」 評者=野樹かずみさん
《収録の五百数十首の短歌には、彼が人生と引き換えにしても守りたかった何か、永遠に清冽な何か、が息づいています》
2023年8月19日 陸奥新報 「憧れへの奉仕と豊かな飢え」 評者=藤田久美子さん
《たぐいまれなる歌才は今もなお銀河のあたりで歌っていると信じたい》
短歌研究10月号 「歌集歌書評」 評者=大森悦子さん
《・全校の運動会に人が消えひとりで踊るオクラホマミキサー
著者晩年の作品。ひとりで踊ることは悲しみや寂しさではなく、歌人蝦名の矜持であるとの野樹氏の言葉が胸に沁みる》