新鋭短歌シリーズ49
『水の聖歌隊』
笹川 諒
監修:内山晶太
四六、並製、144ページ
定価:本体1,700円+税
ISBN978-4-86385-445-1 C0092 2刷
第47回現代歌人集会賞受賞!!
現実と幻影の溶けあう場所へ
言葉とこころにはあとさきがない。
混沌が、輝きながら実っている。
────内山晶太
夢の手触りを信じたくなる
幻想に息吹を与え、こぼれ落ちる寸前に
結晶化する。私はこの歌にあこがれる。
────文月悠光
【著者プロフィール】
笹川 諒(ささがわ・りょう)
長崎県諫早市出身、京都府在住。
大阪大学文学部卒業。
2014年より「短歌人」所属。「ぱんたれい」同人。
第19回髙瀬賞受賞。
【5首】
椅子に深く、この世に浅く腰かける 何かこぼれる感じがあって
手は遠さ 水にも蕊があると言うあなたをひどく静かに呼んだ
しんとしたドアをこころに、その中に見知らぬ旗と少年を置く
硝子が森に還れないことさびしくてあなたの敬語の語尾がゆらぐよ
でも日々は相場を知らない露天商みたいな横顔をふと見せる
新鋭短歌シリーズ
今、若い歌人たちは、どこにいるのだろう。どんな歌が詠まれているのだろう。今、実に多くの若者が現代短歌に集まっている。同人誌、学生短歌、さらにはTwitterまで短歌の場は、爆発的に広がっている。文学フリマのブースには、若者が溢れている。そればかりではない。伝統的な短歌結社も動き始めている。現代短歌は実におもしろい。表現の現在がここにある。「新鋭短歌シリーズ」は、今を詠う歌人のエッセンスを届ける。
掲載情報
東京新聞(3月13日) 評者=土井礼一郎さん
《『水の聖歌隊』には題のとおり「水」やその縁語(みずうみ、涙、グラス…)を含んだ歌が次々と繰り出される。決して心地よいばかりの水ではないのだが、読み進めるうち私たちが失いかけていた大切な液体が体内にも満ちてくるような不思議な感覚に陥る》
現代短歌新聞(5月5日) 評者=睦月都さん
《歌集一冊を通して感じたのはイメージの純度、硬度の高さだ。どのような情景を詠うときもこの人は自身の内面の奥深くまで潜水し、ただひとつの言葉を持ち帰ってくる。技法は決して一様でなく表現が強い一回生をもつために、一首一首が美しく屹立している》
灯台守便り 評者=高木 佳子さん
《現実が渾沌として幻影になるように、実体ははっきりとつかめないが、さびしさが増すような読後感がある。 内山晶太さんによる解説にも「笹川作品は文章でその魅力を解剖するのがとても難しい」とあって、その文体に様々な興味を喚起させられる》詳細はこちら
長崎新聞(5月23日)
《聖歌隊で連想される多くの人が歌う様子を、1行で表記される短歌に重ねた。「一首一首が立って歌っている人のようなイメージ」。「水」と「聖歌隊」という一見意味の分からない言葉の組み合わせによって、何かが確かに生まれる。それは笹川さんが歌で表現しようとすることの一つの象徴でもある》
未来(6月号) 評者=盛田志保子さん
《人と人との間の切なさが、やさしくたのしく表現される》