新鋭短歌シリーズ47
『煮汁』
戸田響子
監修:加藤治郎
四六、並製、144ページ
定価:本体1,700円+税
ISBN978-4-86385-360-7 C0092 2刷
【帯文】
日常の小さな割れ目から此の世に滲みだしてくる彼の世を感じました。
なにひとつ見逃さない、という意志を感じました。
町田康(作家)
首長竜のすべり台に花びらが降る
短歌の黄金地帯をあなたとゆっくり歩く
現実と夢の境には日傘がいっぱい開いていた
加藤治郎
【著者プロフィール】
戸田響子(とだ・きょうこ)
1981年愛知県名古屋市生まれ
未來短歌会彗星集・歌人集団かばんの会に所属
詩形融合作品「煮汁」で第4回詩歌トライアスロン受賞
「拾いながらゆく」で第60回短歌研究新人賞次席
【5首】
郵便がカタンと届き昼寝から浮上してゆく振りむけば海
エンジェルを止めてくださいエンジンの見間違いだった地下駐車場
三本締めが終わった後の沈黙に耐えられなくて服を脱ぎだす
塀越しによくしゃべってた隣人の腰から下が人間じゃない
暴れる鳥をなだめるように折りたたみ傘はかばんの中に納まる
新鋭短歌シリーズ
今、若い歌人たちは、どこにいるのだろう。どんな歌が詠まれているのだろう。今、実に多くの若者が現代短歌に集まっている。同人誌、学生短歌、さらにはTwitterまで短歌の場は、爆発的に広がっている。文学フリマのブースには、若者が溢れている。そればかりではない。伝統的な短歌結社も動き始めている。現代短歌は実におもしろい。表現の現在がここにある。「新鋭短歌シリーズ」は、今を詠う歌人のエッセンスを届ける。
掲載情報
週刊新潮(2020年12月10日) 評者=俵万智さん
《単なる事実を越えて、人の心の真実に届く何かを感じさせられる。それを切り取って提示するだけの表現が、潔い。》