書籍

『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』山田航

現代歌人シリーズ34
『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』
山田航

 

定価:本体2,000円+税
四六判変形、並製、144ページ
ISBN978-4-86385-527-4 C0092
装幀:クラフト・エヴィング商會

 

雨宿りやめる決意を君はする止んだのか濡れる気かは知らない

 

小説的な企みのなかに、「ひかりってめにおもい」ことや「夏が動く音」、「手渡し」の危険さといった日常に潜むスリルが散りばめられている。
ふいに出現する口語の息遣いに虚をつかれた。

江國香織

 

2022年7月刊行。

 

【収録歌より

猫の頭蓋骨は小さい 手に収まるくらいの量の春つかまえる
手渡しは危ないからさテーブルに置くよ紅茶もこの感情も
ひかりってめにおもいの、と不機嫌だごめん寝てるのに電気つけちゃって
電線で切り刻まれた三日月のひかりが僕をずたずたに照らす
海、海、海、海が見えるよ僕たちは海に奇跡の投げ売りを見た

 

【著者プロフィール】
山田航(やまだ・わたる)
1983 年札幌生まれ。札幌在住。
第一歌集『さよならバグ・チルドレン』(ふらんす堂)、第二歌集『水に
沈む羊』(港の人)。
編著に『桜前線開架宣言』(左右社)、エッセイに『ことばおてだまジャ
グリング』(文藝春秋)。

「週刊新潮」9月15日号 「新々句歌歳時記」 評者=俵万智さん

《言葉遊びの類をさせたら、歌人ナンバーワンと思われる作者》

「FUDGE」11月号 

《「雨宿りやめる決意を君はする止んだのか濡れる気かは知らない」誰かの懐へ飛び込むのに、痛みが生じるタイプの人がいる。自分のほかにこの世に人がいることを、心のどこかで信じていない人だ。”関係”を持ってしまったら最後、じぶんが自分ではなくなってします。そして、その”関係”終わっても、元の自分には決して戻れない。そんなヒリヒリした感覚を纏った山田航の最新短歌集。》

北海道新聞(11/5) 評者=田村元さん

《会話を短歌で表現しようとすると、どうしても書き言葉として整理してしまいがちだが、リアルな会話の語順を自然な形で生かしつつ、五七五七七の定形にぴたりと収める手腕はみごとである。》