現代歌人シリーズ32
『バックヤード』
魚村晋太郎
四六判変形/並製/176頁
定価:本体2,200円+税
ISBN978-4-86385-452-9 C0092
ひだまりを汲む井戸がある匿つてくれたあなたのちひさな庭に
記憶そのもののような雨の匂い、
あったことのない祖母の盛りつけるおでん、
見終わった夢が眠っているような書棚――
魚村さんの〈裏庭〉で、わたしたちは懐かしい、未知の歌たちに出逢う。
カニエ ・ ナハ
2021年3月刊行。
【自選5首】
何処かとほく、は僕らになくて降りるとき土のにほひをくちびるはいふ
まだなにかをわすれたいのかゆりの木はからだをひらく五月の雨に
まなざしはこころをためす。銀の斧だつたかと訊く水辺のやうに
おろそかにしてたとおもふ雨がふればヴィニール傘をむだにふやして
ローソンのバックヤードでくちづけをおぼえる子供たちによろしく
【著者プロフィール】
魚村晋太郎(うおむら・しんたろう)
1965年川崎市生まれ。京都市在住。 1990年頃から詩の朗読やパフォーマンスを行う。
1996年、「玲瓏」に入会し塚本邦雄に師事。2000年、左岸の会に参加し岡井隆に親炙。2003年、第一歌集『銀耳』(砂子屋書房)で現代歌人集会賞受賞。第二歌集『花柄』(砂子屋書房)。