現代歌人シリーズ31
『ひかりの針がうたふ』
黒瀬珂瀾
四六判変形/並製/144頁
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-440-6 C0092 2刷
第26回若山牧水賞受賞!!
光漏る方へ這ひゆくひとつぶの命を見つむ闇の端より
早朝の水質検査が終わるころ
斜めに差してくる幾本もの光
まっすぐ歌がやってくる
2021年1月下旬刊行。
【自選5首】
言葉を五つ児が覚えたるさみしさを沖の真闇へと流して帰る
生なべて死の前戯かも川底のへどろ剥がれて浮かびくる午後
詩が僕を訪ねないので浜を這ふ蔓菜に死者の記憶を語る
うみそらの澄みゆく朝に切る舵の肌寒を妻と分かちたきかな
海沿ひに二年を生きて去るわれへ朝の汽笛は低く響けり
【著者プロフィール】
黒瀬珂瀾(くろせ・からん)
1977年、大阪府生まれ。春日井建に師事。歌集に『黒耀宮』(ながらみ書房出版賞)、『空庭』、『蓮喰ひ人の日記』(前川佐美雄賞)。未来短歌会選者、読売歌壇選者。富山市の願念寺住職。
掲載情報
現代短歌新聞(5月5日) 評者=野口あや子さん
《そして何よりこの歌集の主題の奥に滲んでいるのは、静かな中にもぞっとするようなエロティシズムだからである》