『時間の神の蝸牛』
渡辺松男
四六判、上製、216ページ
定価:本体2600円+税
ISBN978-4-86385-608-0 C0092
装幀:毛利一枝
火となれと歯をみがくなれ火とならば孤独を知らんかの雪豹の
渡辺松男の歌はますます自由に 心のままに羽搏く なんて刺激的な!!
前作『牧野植物園』で第七十三回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した著者の第十一歌集。
2023年12月全国書店にて発売です。
【収録歌より】
米櫃へわれの眼玉のおちにけりここが火口でなくてよかつた
俺の眼が螢となつて飛んでゐる祭りの夜の水のゆめかな
白鷺が野辺にふりまくあの白さ尽きざる白さたつた一羽の
花とはちがふ白い狂気がうすくあるそめゐよしのと空とのあはひ
わが吐きしすべての声を溜めてゐる鏡がひらく西日のなかに
【著者プロフィール】
渡辺松男(わたなべ・まつお)
1955年群馬県生まれ。歌集に『寒気氾濫』(現代歌人協会賞)、『蝶』(迢空賞)、『牧野植物園』(芸術選奨文部科学大臣賞)等。句集に『隕石』。「歌林の会」会員。
書評・掲載情報
ダ・ヴィンチ2024年3月号 「注目の新刊情報」 評者=石森康子さん
《些細なことを縁に浮かんでくる記憶とともに、ますます自由に心のままにはばたく》
東京新聞2024年2月10日 評者=石川美南さん
《病床にある渡辺松男は、ほとんどの歌を記憶と想像で作っているのだという。(…)自在に時空間を行き来するこれらの歌は、読む者の心を驚きとともに解き放ち、元気づけてくれるはずだ》
「短歌」5月号 評者=高柳蕗子さん
《大胆かつ繊細。心情と体感が自然に統合され、不思議な強さを帯びた一首一首。会う人ごとにおすすめしたい歌集である》
図書新聞2024年7月27日号 「2024年上半期読者アンケート」 評者=石川美南さん
《病床にある作者が記憶のみを頼りに紡いだとは到底思えない、自在な境地にただただ目を見張る》