『心は胸のふくらみの中』
菊竹胡乃美
四六判、並製、120ページ
定価:本体1,500円+税
ISBN978-4-86385-568-7 C0092 2刷
装丁 成原亜美
装画 安藤智
トロの吐露リスのリスクたわしのわたし掬ってほしい救ってほしい
涙、傷、痛み、女の身体をもつこと。今生きていること全部載せ。
正直でラフでせつなくて、作者を好きになってしまう。
────飯田有子(歌人)
日常のたしかな憤りとときどきの喜びが、
「わたし」の人生を祝福するように歌われていました。
────和田彩花(アイドル)
2023年4月全国書店にて発売。
【収録歌より】
おんなというもの野放しにして生きるには多すぎる爆撃機
愛はお金お金は愛じゃないけれど津波のようなパトロンが欲しい
素敵なことと思う友達の妊娠は知らない国の夜明けみたいな
冷や麦をゆでる八月平和とはわたしでいること家系図途絶えて
iPS細胞は元気にやってるのかなあこっちは元気よマヨネーズ山盛り
女の子を好きなぼくに好きだと言う男の子をなでるぼくの手のひら
賃金のすくなさ自転車を漕ぐちから肉まんふたつ分のおっぱい
独身のからだでどこまで行けるだろうずっと遠洋の漁船の灯り
【目次】
永遠に嚙めないフランスパン
生理休
おんなへん
やわらかな手のうさぎ
空飛ぶ虎
Ms. たらこくちびる
サンドイッチ・ハム男
人生をミニストップ
俺は星屑
心の皮膚
冬の放熱
多くない給料
あかるい前歯
【著者プロフィール】
菊竹胡乃美(きくたけ・このみ)
1995年福岡県生まれ。2015年から短歌を始める。
書評掲載情報
「FUDGE」2023年6月号 今月の新刊&注目作
《独身、けっこん、妊娠、生理、避妊、モラハラ、セクハラ……女の身体で生きることは、ままならなさの連続だ。ため息と舌打ちを真正面からぶつけた31文字は、今まで自分が押し殺してきた感情を内側から暴き、むき出しにして晒してくる。心の痛みを抱え、やるせないユーモアとささやかな希望に縋って生きる。そんなわたしたちの人生を、一緒に絶望して、一緒に祝福しよう》
「変幻自在宝島」 評者=北山あさひさん
《歌集には〈妊娠のふたもじは女偏でありひとつを男偏で書いてみる〉という歌もある。女も男も妊娠も、一方的な解釈にまみれてゴテゴテだ。二本の指でピースしてみる。このハサミでヤなこと全部ぶっちぎってやろうぜ》