『結晶質』
安田茜
四六判変形、上製、192ページ
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-566-3 C0092 2刷
装丁 佐野裕哉
栞 江戸雪 神野紗希 堂園昌彦
雪山を裂いて列車がゆくようにわたしがわたしの王であること
第4回笹井宏之賞神野紗希賞受賞の著者による第一歌集。
安田さんの歌には、「それでも」
──────神野紗希(栞文より)
ゆめでも現実でもなく、さらには妄想でも幻想でもない不思議な空間がくりかえし創り出される一冊のなかで、怒りの感情はとくに激しい。激しく強くかっこいい。
──────江戸雪(栞文より)
安田さんの歌の持つ抽象的で硬質な詩情は日々の暮らしの中から生まれており、そしてまた日々の暮らしに浸されるとき、律動を持ち人々を癒やす、そういう種類のものなのだと思う。
──────堂園昌彦(栞文より)
2023年3月全国書店にて発売
【収録歌より】
冬にしてきみのすべてに触れ得ないこともうれしく手ですくう水
髪に闇なじませながら泣きながら薔薇ばらばらにする夜半がある
戴冠の日も風の日もおもうのは遠くのことや白さについて
死者にくちなし生者に語ることばなしあなたに降りそそぐ雪もなし
石英を朝のひかりがつらぬいていまかなしみがありふれてゆく
【栞】
神野紗希「遠くを、信じる」
江戸雪「アンビバレントパワー」
堂園昌彦「暮らしの中から生まれた結晶」
【目次】
Ⅰ
遠くのことや白さについて
Ⅱ
円になる
ひるなかの耳
席を立つ
舟を出す
weather
twig
default
new moon
agnes
apologize
水煙草がほしいだけ
さくら
Ⅲ
花のつるぎを手放しなさい
叫声
きみの土地から
立ちつくしたい
蛍石
箱
瞼
些事
つばさ
火の話
鉱石
【著者プロフィール】
安田茜(やすだ・あかね)
1994年、京都府生まれ。「立命短歌」「京大短歌」「塔」出身。現在は「西瓜」所属。2016年、第6回塔新人賞。2022年、第4回笹井宏之賞神野紗希賞。
【掲載情報】
共同通信(東奥日報)(4/17)
《日常の真ん中にこんな不可思議さが隠れていることに驚く。現実感が揺らぐ瞬間を捉え、そこから再度、現実に戻ってくるようだ》
「ダ・ヴィンチ」2023年6月号
《「死者にくちなし生者に語ることばなしあなたに降りそそぐ雪もなし」「雪山を裂いて列車がゆくようにわたしがわたしの王であること」など静かで硬質な詩情が漂う一冊である》
現代詩手帖2023年7月号 「連載 うたいこがれる」 評者=笠木拓さん
《ふたつの心が並んでただそっとぶらんこっを漕ぐように、結晶質の歌はそこに、隣にいてくれる》
anan 10月11日号 「anan世代女性歌人のいまを知る。突き刺さる、短歌の言葉。」 評者=岡本真帆さん
《生身の人間が織りなす複雑な心理を美しく、ありのままに肯定する》