『百年の轍』
織江耕太郎
四六判、並製 280ページ
定価:本体1,500円+税
ISBN978-4-86385-424-6 C0093
装幀 成原亜美 2刷
百年の深い静寂を破って因縁渦巻く
社会派ミステリー登場!!
太平洋戦争中に大陸で再会した二人の幼馴染矢島泰介と岩城智也は、必ず生きて帰り、ともに助け合って生きようと誓う。戦後の高度成長期、二人の育った日田の林業は最大の危機を迎え、二人は仲間とともに実りのない戦いに挑む。だが、戦後日本の復興政策によって、国産杉材などの林業の衰退は止められない。木材輸入自由化政策は着々と進められていく。もう一人の幼馴染鬼塚良一もまた、法案をめぐり暗躍。そんななか、鬼塚の失踪事件が起こる。時代は移り、日田、福岡、東京と離れて暮らす子孫たちは期せずして日田に集まり、彼らの複雑に絡んだ糸が解きほぐされ、物語は驚愕の最終章へ。
現代に通じる社会構造へのオマージュ的ミステリー作品。
【著者略歴】
織江耕太郎(おりえ・こうたろう)
1950年、福岡県生まれ。
福岡県立筑紫丘高等学校を経て早稲田大学政治経済学部卒業。
主な著書に、『キアロスクーロ』(水声社、2013年)、『エコテロリストの遺書』(志木電子書籍、2017年。英訳・西訳あり)、『浅見光彦と七人の探偵たち』(内田康夫らとの共著。論創社、2018年)、『記憶の固執』(Zapateo、2018年)、『暗殺の森』(水声社、2019年)、『星降る夜、アルル』(論創社、2019年)などがある。
掲載情報
「西日本新聞」2021年1月9日
《昨今の森林経営管理法の問題点も絡め、腰の定まらない政治と100年先を見据えて杉を育てる林業の世界との対比も印象的》
「大分合同新聞」2021年1月9日
《物語は戦後の高度経済成長期、安価な米産ラワン材など外材に押される日田林業の苦難を縦糸に、登場人物の4代にわたる血脈にまつわる秘密を横糸にして繰り広げられる。〔……〕日田市の林業現場で「木出し」や「間伐」といった作業を取材したという。巧みな展開だけでなく、日田の空気感も楽しめる一冊となっている》 全文はこちら
「朝日新聞」2023年9月2日 「旅する文学」大分編 評者=斎藤美奈子
《出生の秘密や謎の失踪事件がからんだ社会派林業ミステリー。親子四代、100年にまたがる物語は読みごたえ抜群だ》