書籍

『フルトラッキング・プリンセサイザ』池谷和浩

『フルトラッキング・プリンセサイザ』 
池谷和浩

四六判、上製、224ページ
定価:本体1,800円+税
ISBN978-4-86385-627-1 C0093

装丁 成原亜美(成原デザイン事務所)
装画 盛圭太「Bug report (Circuit)」


第5回ことばと新人賞受賞作!!

VRにAI、最新のテクノロジーを題材としながら、読後には人肌のような温みが残る。
読者はきっと、作中人物たちに対して抱く自分の優しさに驚くだろう。それは視点やナラティブがつくり出す仮想現実的な効果であり、それこそが作者が小説に持ち込んだテクノロジーなのだ。
――滝口悠生


情報と身体、科学と物語がますます複雑に交差し、いま「感覚の大気」が変動している。行方がわからないその変動を、この小説家は、現時点で生け捕りにしているかのようだ。
――千葉雅也

 

映像や3DCGを扱う制作プロダクションに勤めるうつヰの一日は長い。今夜バスタオルで体を拭くのを忘れないようメモするアプリケーションには何が最適か。部長の言うユーキューは「有給」なのか「有休」なのか?仕事を終えると「プリンセサイザ」にログインする。京王線沿線の各駅に配置された王女たちと、仮想空間システムを渡り歩けるソーシャルVRの中で交流するのだ。選考会で激賞された第5回ことばと新人賞受賞作「フルトラッキング・プリンセサイザ」ほか、一年後をつづった「メンブレン・プロンプタ」、うつヰの学生時代を描いた「チェンジインボイス」を収録。

 

2024年5月中旬発売。

 

池谷和浩×バーチャル美少女ねむ『フルトラッキング・プリンセサイザ』刊行記念トークイベント

https://www.youtube.com/watch?v=UUclPJ-4lIQ

※こちらのnote記事で詳しく紹介していただいています。
https://note.com/nemchan_nel/n/n4eea973d896b

 

書肆侃侃房のポッドキャスト池谷和さん出演回▼

https://podcasters.spotify.com/pod/show/shoshikankanbou/

episodes/2-e2m9vmp

#2 ゲスト ・ 福田節郎さん/池谷和浩さん 「ことばと新人賞受賞者の(はじめての) つどい」
佐々木敦さん編集長の文学ムック 「ことばと」 で、 書肆侃侃房が主催する小説の新人賞 「ことばと新人賞」。
「銭湯」で第4回 (2022年) 受賞の福田節郎さん、 「フルトラッキング・プリンセサイザ」で第5回 (2023年) 受賞の池谷和浩さんをお招きして、 「ことばと新人賞」について、受賞当時のこと、単行本化作業のこと、小説家になったおふたりの未来まで、源流を振り返りながらお聞きしました!(聞き手: 営業 倉本)

 

【著者プロフィール】
池谷和浩(いけたに・かずひろ)

1979年6月生まれ。栃木県立宇都宮高等学校卒。筑波大学日本語・日本文化学類卒。東京都在住、会社員。現職はデジタルハリウッド株式会社の執行役員として大学事業を統括。「フルトラッキング・プリンセサイザ」で第5回ことばと新人賞を受賞。

▼インタビュー記事
好書好日「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。
ことばと新人賞・池谷和浩さん 信奉と創作は共存する――千葉雅也になれない僕が書く、僕だけの小説 
連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」#9


 

【掲載情報】

毎日新聞(5/29) 文芸時評 評者=大澤聡さん

《重要なはずの情報を伏せたり先送りにしたり、軽く扱ったりと、黙説法に準ずる語りが特徴的だ(略)次の行動をやたら予告するなど冗説法へちかづく。言語化以前と過剰言語化。その両極への引きさかれが全編を構成し、言語との通常の距離感は攪乱される。(略)ありそうでなかった現代のメディア環境を体現する斬新な語りの挑戦、それを言語との距離の再測定が可能にする。》

週刊ポスト(NEWSポストセブン) 評者=香山リカさん

《(略)淡々と語られるふたつの世界の切れ目のなさに驚かされる。とはいえ、決してどちらかを優先しているわけではないし、かつて案じられたように「現実とゲームとを混同」しているわけでもない。リアルはリアル、ゲームはゲーム、でもどちらも自分の居場所なのだとばかりにごく自然に振る舞っている。ゲーム世界の描写はイキイキしており、未経験者にも魅力が伝わる》

京都新聞(7/8)

群像(2024年8月号) エッセイ「半歩先のこと」掲載