『恐竜時代が終わらない』
山野辺太郎
四六判、並製、184ページ
定価:本体1,700円+税
ISBN978-4-86385-625-7 C0093
装丁 アルビレオ
装画 ひうち棚
リアルにファンタジーが溶け出し、新たな世界へと導く山野辺太郎の真骨頂!
やわらかい言葉と適度なペーソスで、作者は奇想を真実に変える。「恐竜時代」とは、人を信じるための胸のくぼみに積み重ねられた、記憶の帯だ。私たちの心の地層の底にもそれは眠っていて、あなたに掘り起こされる日を静かに待っている。
――堀江敏幸
「恐竜時代の出来事のお話をぜひ聞かせていただきたい」。
ある日「世界オーラルヒストリー学会」から届いた一通の手紙には、こう記されていた。
少年時代に行方をくらました父が、かつてわたしに伝えた恐竜時代の記憶。語り継ぐ相手のいないまま中年となったわたしは、心のうちにしまい込んだ恐竜たちの物語――草食恐竜の男の子と肉食恐竜の男の子との間に芽生えた切ない感情の行方を、聴衆の前で語りはじめる。
食う者と食われる者、遺す者と遺される者のリレーのなかで繰り返される命の循環と記憶の伝承を描く長編小説。
表題作ほか、書き下ろし作品「最後のドッジボール」を収録。
試し読みを公開中!(『恐竜時代が終わらない』冒頭より)
著者が本書の魅力を語るCM動画を公開中!
2024年5月中旬発売。
【著者プロフィール】
山野辺太郎(やまのべ・たろう)
1975年、福島県生まれ。宮城県育ち。東京大学文学部独文科卒業、同大学院修士課程修了。2018年、「いつか深い穴に落ちるまで」で第55回文藝賞を受賞。著書に『孤島の飛来人』(中央公論新社)、『こんとんの居場所』(国書刊行会)などがある。
書評・掲載情報
「週刊文春」5月30日号 文春図書館「今週の必読」 評者=左沢森さん
《冒頭の時点には戻らずに、どこか投げっぱなしに終わっていくラストがいい。山野辺太郎の語りは物語的円環の中に閉じることなく、誰かに語り直されるのを待っているようだ》
「Kappo 仙台闊歩」7月号 著者インタビュー記事 聞き手=土方正志さん
《なんとも不思議な世界を描く小説家である》《山野辺ワールドは予測不能な奇想世界へ読者をさらりと連れ去る〉
河北新報(6月16日・朝刊) 「著者とひととき」 著者インタビュー記事
《命の循環の中に生があると考えれば、誰もが逃れられない死をどう捉えるかも問われる》
北國新聞(6月16日・朝刊) 「この一冊」 評者=杉山欣也さん
《記憶され語られるあいだ、死者は生者の心の中で生き続ける。そのことを思い起こさせる1冊である》
毎日新聞(6月17日・夕刊) 著者インタビュー記事 聞き手=関雄輔さん
《真面目なことを真面目に書いても物語は広がらない。現実的な可能性を超えたホラ話に踏み出した方が、豊かなものが見えてくる》
「週刊読書人」6月21日号 評者=九螺ささらさん
《本書を読むと、この「食う」ということが、相手を取り込み一体となって共に延命する愛の行為に見えてくる》
産経新聞(6月23日・朝刊) 評者=石井千湖さん 「記憶を巡る奇想小説」
《誰かにとっては「インチキ」でも、自分にとってかけがえのない記憶を残したいという願いが小説の形になって輝いている》
東京新聞(6月26日・夕刊)文芸時評 評者=伊藤氏貴さん
《巻末の書き下ろし短編「最後のドッジボール」の父と息子の関係がなんとも心温まる》
「週刊新潮」6月27日号 評者=乗代雄介さん
《誰かに語られる話は小さな歯車に過ぎない。しかし、それに噛み合った者たちの生き方を変え、だから死に方も変えてしまう。誰かの口が回る限り、力は消えない》
「クロワッサン」7月25日号 聞き手・文=鳥澤光さん 「本を読んで会いたくなって」
《物語を磨き上げることを生の拠りどころとする小説の主人公と作家の姿が重なり、奇想が光を放って、読み、書き、語るいくつもの人生の道行を明るく照らす》
「母の友」9月号 評者=磯上竜也さん
《親から子へ、そしてその先へ。ささやかな、けれどかけがえのない《わたし》の記憶が幾度も語りなおされはるか彼方へと届きうる。そんな途方もない想像力をかき立てられる一冊》
「エクラ」9月号 オトナの文藝部 評者=斎藤美奈子さん
《単なる寓話というなかれ》
《気が遠くなりそうな時間を一瞬で跳び越える。ありえない事実を見てきたように語る話術は一級品》