『わたしはわたしで』
東山彰良
四六、並製、256ページ
定価:本体1800円+税
ISBN978-4-86385-605-9 C0093
装画:渡邊涼太
直木賞受賞作『流』の続編「I Love You Debby」ほか、
珠玉の作品6編を収録。
人生はままならない。諦めの連続だ。
悲しくて。悔しくて。寂しくて。
一瞬成功したかにみえても
待ち受けている落とし穴は底なし。
「I Love You Debby」
自分の不始末を許すことが出来ない娘を連れてアメリカから帰国、叔父のもとへ。『流』の読者が知りたかった叔父の秘密がついに明かされる。
「ドン・ロドリゴと首なしお化け」
元殺し屋かもしれない男の運命を左右する首なしお化けに振り回され、ついに。
「モップと洗剤」
偶然父親を殺した男の情報を摑んでしまった男とその親友。ネット炎上の先に二人を待ちうける運命。
「わたしはわたしで」
コロナ禍で仕事を失い、貯金も底をつき、行きつく先は小説を書くことしか……。
「遡上」
幼馴染の二人。一人は漁師町に残って漁業で生き、一人は東京で出版社勤め、故郷の同窓会で過去が動き始める。
「REASON TO BELIEVE」
コロナ禍でやむなく中洲で働くしかないが、最後の一線は越えられない。ぎりぎりのところで踏みとどまるが。
幸も不幸も薄紙をはがすように透けて見える、語り巧者の東山彰良が描く異色の6編。
2023年12月上旬刊行予定。
【著者プロフィール】
東山彰良(ひがしやま・あきら)
1968年台湾台北市生まれ。9歳の時に家族で福岡県に移住。 2003年第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法TURD ON THE RUN』で、作家としてデビュー。 09年『路傍』で第11回大藪春彦賞を、15年『流』で第153回直木賞を、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。 17年から18年にかけて『僕が殺した人と僕を殺した人』で第34回織田作之助賞、第69回読売文学賞、第3回渡辺淳一文学賞を受賞する。『Turn! Turn! Turn!』『夜汐』『越境』『小さな場所』『どの口が愛を語るんだ』『怪物』など著書多数。訳書に、『ブラック・デトロイト』(ドナルド・ゴインズ著)がある。
書評・掲載情報
毎日新聞(2023/12/22・地域) 2023年回顧「文学」
《東山彰良はコロナ禍に書いた作品中心の短編集『わたしはわたしで』を出版》
読売新聞(2024/1/20・九州) 「コロナに向き合う」短編集 東山彰良さん刊行
《収められた6編の多くはコロナ禍の閉塞感の中で紡がれ、そこには苦悩する作家自身の姿も垣間見える》
共同通信配信(2024年2月~ 福島新報・琉球新報ほか)
《それぞれの土地の風、においを感じさせる風景描写が一層の余韻を残す》
ダ・ヴィンチ2024年3月号 「注目の新刊情報」 評者=桑島まさきさん
《ままならない人生を語る人々の心情に、共感を覚えるだろう》
毎日新聞(2024/2/23・九州)著者インタビュー「コロナ禍、戦争と向き合い エンタメ回帰」 記事=上村里花さん
《主人公たちはどうしようもない自分自身を受け入れることで、一歩を踏み出していく》
潮 2024年4月号 評者=佐久間文子さん
《東山彰良という作家の魅力はなんといってもその声にある。絶望的な状況にあってもユーモアを忘れず、どこか温かみがある。この語り手を信じてみようと思わせる、未来を見通す力を備えた声である》