書籍

『私と鰐と妹の部屋』 大前粟生

『私と鰐と妹の部屋』
大前粟生

四六判、並製、144ページ
定価:本体1,300円+税
ISBN978-4-86385-357-7 C0093 2刷

装幀・装画 惣田紗希

きもちのいい奇天烈。たぶん、きもちがいいのは、それが本能とか骨とかに刻まれた、文様のようなものだから。知らなかった世界なのに、自分を見つけた気もしてる。
――最果タヒ


妹の右目からビームが出て止まらない。薔薇園にいくと必ず鰐がいた。眠たくて何度も泣いた。紙粘土で上司たちの顔をつくった。三人でヤドカリになった。サメにたべられて死にたいだけの関係だ。あたらしい名前がいる。おばけになっているときはなにも話してはいけない。肩車をした拍子に息子の股間が私の首にくっついてしまう。隠れ家的布屋さんは月に進出している。私は忍者で、すごいのだけれど、あんまりみんな信じない。……可笑しさと悲しみに満ちた53の物語

2019年3月中旬全国書店にて発売。

【著者略歴】
大前粟生(おおまえ・あお)
一九九二年兵庫県生まれ。京都市在住。
二〇一六年、「彼女をバスタブにいれて燃やす」がGRANTA JAPAN with早稲田文学公募プロジェクト最優秀作に選出され小説家デビュー。「ユキの異常な体質 または僕はどれほどお金がほしいか」で第二回ブックショートアワード受賞。「文鳥」でat home AWARD 大賞受賞。
著書に短編集『のけものどもの』(惑星と口笛ブックス)、『回転草』(書肆侃侃房)。

【収録作品】
ビーム/ムキムキ/ものを溶かす汗/世界ブランコ選手権こどもの部決勝戦/へそのゴマ/狼/骨とテレビに出た/かなでちゃん/こっくりさん/私と鰐と妹の部屋/植物園/お墓/なにかが死んでいる/屋根裏部屋/チェーンソー/夜中/歯医者さんの部屋/サンバイザー/こういうのが好き/呪われてしまえ/トースター/紙粘土で友だちをつくった/刺繡/私はゼロ/夏/僕は泳いだ/二十歳になったら悪魔になる/てるてる坊主/おばけの練習/小説とケーキ/誕生日/虹/ジョン・トラボルタ/好きなひとと同じときに体調を崩してるとうれしいよね/ミイラ/いまどこにいるの/星を読まない/ヤドカリの家/トカゲの死/サランラップ/平凡/隠れ家的布屋さん特集2049/植物って知ってる?/仕事をやめる/斧に白いサインペンで名前を書く/シェルター/知らないひと/石の動画/鞄/サメ友だち/棺のなか/雷は庭に落ちた/あそび

書店員さんからのコメント

「どの作品も、書き出しの1行目がものすごいパワーパンチで、一瞬にして引き込まれます。

例えば「ビーム」という話は、「妹の右目からビームが出て止まらない」って書き出しで始まるんです。

力が抜けていて、独特。まさに新しい書き手だなって思います。

ショート・ショート(特に短い小説のこと)って、オチだけが大事にされがちですが、大前さんの物語はおもしろいままあっさり終わる。

その、いい意味のサクッとした存在感がとてもおしゃれだなあと思います」(「an・an」2019年7月3日号

(HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE 新井見枝香さん)

 

「突飛な設定だからこそ自分の感情に落ちてくるところがある。落差が響く。

小説からしか得られない感覚や表現がある」(AOYAMA BOOK CHOICE、2019年4月27日

(青山ブックセンター本店 山下優さん)

 

「『回転草』を超える面白さ! 他の小説では感じられないエクスタシー。

感情という、とてつもなく大きな問題に、100%の誠意でぶつかって答えを出している。

ショートショートの星新一のように、大前粟生が何か新しいジャンルの代名詞になるにちがいない」

(HMV&BOOKS SHIBUYA 前野鉄兵さん)

 

「いつまでもこの世界に浸っていたくなる1冊。不思議で、こわくて、切なくて、キュート。そしてめちゃくちゃにパンク!

さらりととんでもないことが書かれているさまに心臓を撃ち抜かれました。好き。」

(ジュンク堂書店池袋本店 市川真意さん)

 

「ガーリーでシュール。人間が持つ喜怒哀楽を『怖』が包み込む。

混ぜ合わせたり、不意に背中から刺したり、いろんな手法で『怖』を感じられる。

ぞわぞわしながらも次へ次へと読み進めるのを止められない。

ショートショートだからこそ味わえる新感覚。今だからこそ描かれる世界観」

(文教堂書店赤羽店 三井洋子さん)

 

「拾った手帳をうっかり読んでしまった気がする小説。奇天烈なのに、私の秘密を書かれてしまったようで戸惑う」

(丸善博多店 徳永圭子さん)

 

「大前粟生作品の、特に女子を見ていると、いつも思い切りが良すぎてすがすがしい気持ちになります。(……)

本気でそのようなことをしようと思ってはいないのかもしれないけれど、誰かに言われるその前に、息つく間もなく、

やってしまう女の子が多い。そう思います。

できるかできないかということを考えずに物事を進めようとするひとの姿勢は、ほんとうにうつくしいです。

銀紙のように、キラキラしています。

それだからこそ、私たちは大前作品を読まずにはいられなくなるのではないでしょうか」(全文はこちら

(ジュンク堂書店福岡店 松岡千恵さん)

書評

「新潮」2019年5月号 評者=福尾匠さん
《大前の小説は言葉と感情、言葉と身体の直接的な関係の回路を極限まで加速させ、そのあやうさと希望、恐怖とやさしさをともに示してみせる。〔……〕共感の時代を「私は私、われわれはわれわれ、お前はお前」の時代にしないやさしさの実験を、その対決の恐ろしさとともにこの本は引き受けている》

「毎日新聞」2019年4月24日 評者=倉本さおりさん
《誰かが生きていること。それ自体の奇跡を奇想の力へと鮮やかに転じた掌編集〔……〕あっけらかんとした言葉のつらなりに祈りにも似た悲哀が滲む》

「毎日新聞」2019年4月24日 評者=大澤聡さん​
《目からビームが出たり、足の裏の汗が物を溶かしたり、こっくりさんと70年生活したり……と奇異な設定ばかりなのに、読者がその断面や隙間に自分の別の生を見出すのは語りの時間的操作性ゆえ》

「an・an」2019年7月3日号 評者=新井見枝香さん(HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)
《どの作品も、書き出しの1行目がものすごいパワーパンチで、一瞬にして引き込まれます。〔……〕大前さんの物語はおもしろいままあっさり終わる。その、いい意味のサクッとした存在感がとてもおしゃれだなあと思います》

フェア情報

HMV&BOOKS SHIBUYAにて『私と鰐と妹の部屋』刊行記念フェア「大前粟生の意思の何か」が始まりました!

大前さんが選書された『カミーユ』『出身国』『悪童日記』『燃えるスカートの少女』なども展開されています。

ポップのコメントもチェックしてみてください。

プレゼントキャンペーン応募要項

※終了しました

・プレゼント概要
抽選で3名の方に、新刊『私と鰐と妹の部屋』Tシャツをプレゼント

・応募方法
ハッシュタグ「#私と鰐と妹の部屋」をつけ、『私と鰐と妹の部屋』収録の53作品のうち、とくに面白いと思った作品を選んで、

①作品タイトル ②感想

をツイートしてください。

・応募期間
2019年4月17日(水)~5月31日(金)

・プレゼント送付時期
2019年6月10日ごろ送付予定

イベント情報

【イベント第四弾/大阪】※開催終了

『私と鰐と妹の部屋』刊行記念

大前粟生さん×大滝瓶太さんトークイベント

「言葉のたのしみ、小説のたのしみ。」

日時:2019年6月8日(土)18:00から

場所:toi books(大阪市中央区久太郎町3-1-22 OSKビル2F)

https://mailtotoibooks.wixsite.com/toibooks/post/%E3%80%90event%E3%80%91%E3%80%8E%E7%A7%81%E3%81%A8%E9%B0%90%E3%81%A8%E5%A6%B9%E3%81%AE%E9%83%A8%E5%B1%8B%E3%80%8F%E5%88%8A%E8%A1%8C%E8%A8%98%E5%BF%B5%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%E3%80%8C%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%97%E3%81%BF%E3%80%81%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%97%E3%81%BF%E3%80%82%E3%80%8D%E5%A4%A7%E5%89%8D%E7%B2%9F%E7%94%9F-%E5%A4%A7%E6%BB%9D%E7%93%B6%E5%A4%AA

【イベント第三弾/福岡】※開催終了

『私と鰐と妹の部屋』刊行記念

大前粟生さん×大滝瓶太さんトークイベント

「笑いとホラーと大前粟生の小説」

無邪気と凶暴が共在する想像力と文章で注目を浴びる作家・大前粟生。53の物語を収録した新刊『私と鰐と妹の部屋』(書肆侃侃房)でもその個性は光り、どれもとても短い作品であるがゆえに、よりアクロバティックな小説集となっています。書評家、批評家としても活躍する気鋭の作家・大滝瓶太は自然科学やSF的想像力を作品に用いながら、「言語」というものの得体の知れなさに接近しようとしています。今回のイベントでは大前の作品にも特徴的な「笑い」や「恐怖」に焦点をあてながら、小説や表現について考えます。

日時:2019年5月10日(金)19:30~21:00(開場19:00)

場所:本のあるところ ajiro(福岡県福岡市中央区天神3-6-8)

https://docs.google.com/forms/d/177Pf8aO2RmEOrmwhChSQqqtnne-DvK4ViwcWMv6BN0c/edit

【イベント第二弾/大阪】※開催終了

『私と鰐と妹の部屋』刊行記念

大前粟生さん×谷崎結依さん×酉島伝法さんトークイベント

「鰐と王と星の部屋 現代文学のこと」

日時:2019年5月6日(月・祝)19:00~20:30(開場18:30)

場所:梅田 蔦屋書店(大阪市北区梅田3-1-3 ルクア イーレ9F)

https://store.tsite.jp/umeda/event/humanities/5856-1207480330.html

【イベント第一弾/東京】※開催終了

『ぼくはきっとやさしい』『私と鰐と妹の部屋』刊行記念

町屋良平さん × 大前粟生さんトークイベント

「言葉と言葉じゃないものを見つめる」

言葉を口から出すときのためらいを丁寧に観察し、魔法のような文章で青春や恋愛、弱さを描き出してきた町屋良平。芥川賞受賞作『1R1分34秒』では人生に厭きたプロボクサー、最新刊『ぼくはきっとやさしい』では全力で恋をする「メンヘラ男子」が主人公だ。一方、大前粟生のデビュー短篇集『回転草』では西部劇で転がる草のかたまりが語り出し、最新刊『私と鰐と妹の部屋』でも鋭い刃のような53の奇想が描かれる。主人公たちは素朴な感情をたくさん口にするけれど、肝心なところでは言葉を失ってしまい、それが切実さを醸し出す。町屋と大前の小説が重なり合うところにある「言葉へのためらい」。それがどのような物語を小説家に書かせ、そして書かせないのか。ともに2016年にデビューした気鋭の小説家が、お互いの著書や小説を書くこと、小説を読むことの魅力をたっぷりと語ります。

日時:2019年3月23日(土)18:00〜19:30

場所:青山ブックセンター本店(東京都渋谷区神宮前5-53-67)

http://www.aoyamabc.jp/event/words/

★対談の模様が記事になりました。

美しさと痛み、救いと救われなさ──「間」を綴る小説家 大前粟生と町屋良平の対話