『回転草』
大前粟生
四六判、上製、216ページ
定価:本体1,500円+税
ISBN978-4-86385-321-8 C0093
装幀・装画 惣田紗希
楽しくてばかばかしくて切実な絶望で、今にも破裂しそう。
読んでる私も破裂しそう。せーのでいっしょに破裂したい!
――藤野可織
「たべるのがおそい」で衝撃的な話題を呼んだ「回転草」、冬休みに母と妹とともに亡き祖父の湖畔の家で過ごした恐怖の日々を描いた「夜」、キリンになったミカを解体する描写からはじまる「彼女をバスタブにいれて燃やす」、記録的な吹雪の夜に現れたユキとの氷の生活を綴った「海に流れる雪の音」をはじめとする、愛と狂気と笑いと優しさと残酷さとが混在した10の物語。
2018年6月中旬全国書店にて発売。
著者略歴
大前粟生(おおまえ・あお)
一九九二年兵庫県生まれ。京都市在住。
二〇一六年、「彼女をバスタブにいれて燃やす」がGRANTA JAPAN with 早稲田文学公募プロジェクト最優秀作に選出され小説家デビュー。「ユキの異常な体質 または僕はどれほどお金がほしいか」で第二回ブックショートアワード受賞。「文鳥」でat home AWARD大賞受賞。著書に短編集『のけものどもの』( 惑星と口笛ブックス)。
収録作品
「回転草」
「破壊神」
「生きものアレルギー」
「文鳥」
「わたしたちがチャンピオンだったころ」
「夜」
「ヴァンパイアとして私たちによく知られているミカだが」
「彼女をバスタブにいれて燃やす」
「海に流れる雪の音」
「よりよい生活」
書評・掲載情報
ケトル(2018年10月号) 評者=豊﨑由美さん
《癖の強い語り口や簡単にはわかった気にさせない物語。知らない世界や経験したことのない感情。そうした完全なる他者の言葉と思考を、積極的に自分の中に取り込んだ時に生じる、純粋な驚きと生まれ変わったような感覚。わたしにとっての、読書の歓びの素を全部備えた作家で、驚いちゃったんである》
TVBros.(2018年11月号) 評者=豊﨑由美さん
《わけのわからないことが、ほぼわけのわからないまま放置され、起きたことの因果関係は明らかにされず、夜が怖ろしかった子供の頃の感覚だけが理屈抜きにリアルに蘇ってくる。巧い小説ではないけれど、わたしにとっては生涯忘れえぬ1篇になったことは間違いない。おそらく、誰もが10篇の中からそんな宿命的といってもいい物語を見つけることができるはず。凄い新人の登場に、興奮を隠せない》
ダ・ヴィンチ(2018年10月号) 評者=西崎憲さん
《ウィリアム・バロウズより速く、同じ閉鎖系を得意とした安部公房よりも何倍も速く、私たちはそして新しい言語の礫を避けながら読み進めなくてはならない。〔……〕何というまばゆさ》
週刊新潮(2018年9月6日号) 評者=武田将明さん(東京大学准教授/評論家)
《「この世界」から少しズレた光景を、醒めた感性で幻視し、現実に上書きしてみせた。ヴァーチャル・リアリティーならぬヴァーチャルなもののリアリズム。マジック・リアリズムのアップデート版とも言える本作の世界は、現代小説の世界を拡張する可能性を示唆している》
《なかなかに形容しがたい面白さを持った短篇が並ぶ。それらに共通してあるのは、一見荒唐無稽な狂気を孕んだストーリー、グロテスクとも言えるほどの描写、それらが突き抜けた先ににじみ出てくるユーモア、そして通奏低音のように流れ続ける絶望感などである。幻想文学やシュルレアリスム文学などを好む読者をはじめ、さらには柴田元幸氏や岸本佐知子氏などによる、奇妙な味わいを持った翻訳作品が好きな読者におすすめの作品集である》
《「たべるのがおそい」で衝撃的な話題を呼んだ「回転草」、冬休みに母と妹とともに亡き祖父の湖畔の家で過ごした恐怖の日々を描いた「夜」、キリンになったミカを解体する描写からはじまる「彼女をバスタブにいれて燃やす」、記録的な吹雪の夜に現れたユキとの氷の生活を綴った「海に流れる雪の音」をはじめとする、愛と狂気と笑いと優しさと残酷さとが混在した10の物語。》