書籍

『次の夜明けに』徐嘉澤

現代台湾文学選1
「次の夜明けに」下一個天亮
徐嘉澤 著
三須祐介 訳

四六、上製、224ページ
定価:本体1,900円+税
ISBN978-4-86385-416-1 C0097

装幀 木庭貴信+オクターヴ
カバー写真 李翰昇

 

現代台湾文学選、始動。

近代台湾史を貫く民草の悲哀を重層的に捉えた作品だ。勇気と保身、執着と後悔、正義とその代償。何かを得るために何かを失うのが人生なのだとしたら、彼らは誰ひとり間違ってなどいない。
――東山彰良(小説家)

 

よどみなく流れる物語に心を打たれる。徐嘉澤は優れたストーリーテラーなのだ。そして知らぬ間に読者は、複雑で入り組んだ台湾の歴史の記憶のなかに引きこまれてゆく。
――郝譽翔(作家)


『次の夜明けに』は徐嘉澤の野心作である。台湾の大きな歴史と個人のささやかな欲望を一本の辮子(ピエンツ:お下げ)あるいは鞭子(ピエンツ:鞭)へと巧妙に編み上げて、苦悶の暗黒時代のなかに、ヒューヒューと音をたてながら、一すじ一すじの光明の所在を明らかにしていく。
――紀大偉(作家)

 

台湾の新世代作家の一人、徐嘉澤
本作が本邦初訳

1947年、二二八事件に始まる台湾激動の頃。民主化運動で傷つき、それまでの生き方を変えなければならなくなった家族。新聞記者の夫とともに、時代の波に飲まれないよう、家族のために生き、夫の秘密を守り続けて死んでいった春蘭(チュンラン)。残された二人の息子、平和(ピンホー)と起義(チーイー)は、弁護士と新聞記者として、民主化とは、平和とは何かを追求する。起義の息子、哲浩(ジョーハオ)は、歴史にも政治にも関心がなく、ゲイだと告白することで一歩を踏み出す。三代にわたる家族の確執を軸に、急激に民主化へと進む時代の波に翻弄されながらも愛情を深めていく一家の物語。


2020年9月中旬全国書店にて発売。

 

【目次】
次の夜明けに  
フォルモサ  
僕らは山の歌をうたうよ  
A7802  
少年Y  
阿美! 阿美!
野イチゴの戦い  
公理と正義のドレス  
父なし子  
無声映画  
最後の審判の前に
著者あとがき  
訳者あとがき
 


【著者プロフィール】
徐嘉澤(じょ・かたく/Hsu Chiatse)

1977年、台湾高雄生まれ。国立高雄師範大学卒業、国立屏東師範学院大学院修了。現在、高雄特殊教育学校で教鞭を執りながら、作家活動を行っている。
時報文学賞短編小説部門一等賞、聯合報文学賞散文部門一等賞、九歌二百万長編小説コンテスト審査員賞、BenQ華文電影小說一等賞などを受賞。高雄文学創作補助、国家文化芸術基金会補助などの助成を受けた。著書に散文集『門内的父親』(九歌出版、2009)、小説作品に『詐騙家族』(九歌出版、2011)、『窺』(基本書坊、2009/2013[新版])、『不熄燈的房』(寶瓶文化、2010)、『孫行者、你行不行?』(九歌出版、2012)、『下一個天亮』(大塊、2012)、『討債株式会社』(遠流、2012)、『秘河』(大塊、2013)、『第三者』(九歌出版、2014)、『鬼計』(大塊、2016)など。


【訳者プロフィール】
三須祐介(みす・ゆうすけ)
1970年生まれ。立命館大学文学部教員。専門は近現代中国演劇・文学。翻訳に棉棉『上海キャンディ』(徳間書店、2002)、胡淑雯『太陽の血は黒い』(あるむ、2015)、論文に「林懐民「逝者」論:「同志文学史」の可能性と不可能性をめぐって」(『ことばとそのひろがり』6、2018)、「『秋海棠』から『紅伶涙』へ:近現代中国文芸作品における男旦と “男性性” をめぐって」(『立命館文学』667、2020)など。

 

【現代台湾文学選】
台湾の現代文学には、激動の時代の空気感を伝えるだけでなく、現在の台湾の人びとの抱える問題が色濃く反映されている。ただ、観光に行くだけでなく、人々の暮らしや思いにも心を寄せてみたい。小説の中には私たちが知らない台湾の姿が色濃く滲んでいるにちがいない。

掲載情報

サンデー毎日(2020年10月20日) 評者=川本三郎さん(評論家)

《自分と三代の家族をモデルに、彼らが台湾の現代史をどう生きたかを思いを込めて辿っている。(……)家族の物語のなかにさまざまな社会的な事 件が織り込まれ、それが読みどころになっている》

熊本日日新聞(2020年11月29日) 評者=中山智幸さん

《歴史に翻弄される者。革命に飛び込んでいく者。社会の変化に器用に、しなやかに対応していける人物は、ここにはいない。彼らは右往左往しながらもなにかを守ろうと奮起し、変えていこう、変わっていこうと一歩を踏み出す》

婦人公論(2020年12月22日・2021年1月4日合併号) 評者=川口晴美さん

《ダム建設反対運動、いじめによる少年の死亡事件、水害、外国人就労者の問題、LGBTパレードなど、他人事とは思えない現実が巧みに物語に取り入れられているからか、登場人物は誰もが私たちの隣人のような存在感がある》

図書新聞(2021年1月1日 第3477号) 評者=ぱせりさん

《作者は、三世代の親子たちの向こうに、きっと台湾をみつめている》

週刊読書人(2021年1月8日) 評者=渡邊英理さん

図書新聞(2021年2月6日 第3477号) 評者=濱田麻矢さん

《「抑圧からの自由」から「自分らしく生きる自由」へ》

妄想Trip!#おうち台湾

《気鋭の新世代作家による文学小説》

『次の夜明けに』刊行記念トークイベント開催決定!

書肆侃侃房では、9月に『次の夜明けに』を刊行しました。 これを記念して、「KITAKAGAYA FLEA 2020 AUTUMN & ASIA BOOK MARKETオンラインわいわいまつり」内の「わいわいチャンネル」にて、著者の徐嘉澤(じょ・かたく)さん、翻訳者の三須祐介さんによるによるオンライントークイベントを開催します。

開催日:10月17日(土)

開催時間:16:30〜18:00

出演:徐嘉澤(じょ・かたく)さん、三須祐介さん
同時通訳:劉靈均さん

 

配信フォーマット:Zoom(生配信)

料金:500円

購入期限:10月14日23:59まで

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【お知らせ】
このたび、書籍の背にある「現代台湾文学選」のマークの刷り色が、印刷上の間違いで違う色で印刷されていることが発覚いたしました。既にご購入なさったみなさまにつきまして、正しいカバーをお求めの方には、カバーが刷り上がり次第(9月下旬頃予定)、郵送でお送りいたします。大変お手数をおかけいたしますが、下記アドレスまで、①ご住所、②お名前、をご明記ください。どうぞよろしくお願いいたします。
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