書籍

『ある作為の世界』 鄭泳文

『ある作為の世界』
鄭 泳 文/著  
奇 廷 修/訳

四六判並製、304ページ
定価:本体1,600円+税
ISBN978-4-86385-226-6 C0097

装幀 宮島亜紀
装画 ありかわりか 「耳をすまして」

荒涼たる原野ロサンゼルスから
霧のサンフランシスコへ

見たこと、聞いたことをそのまま表現しないことに徹した
詩的リアリティーの顕在化。空想の世界へ。

春と夏、二つの季節をサンフランシスコで過ごしながら書いた、漂流記に近い滞在記。

2016年7月上旬全国書店にて発売。

【目次】
序文 
テキーラを飲みつつサボテンを狙い打って過ごした時間
ハリウッド
仕方なくせざるを得ないあきれたこと
アメリカのホボ
僕が面白く思っていること
キャットフィッシュと猫
サンフランシスコの変わり者と気狂い
最初に北極点に到達した猿
僕が物事に意欲がなくなったせいで太平洋に流されずにすんだ果物
メンドシーノ
ある作為の世界
啓示ではない啓示
溺死体
時間の浪費
復讐に対する考え
ハワイの野生の雄鶏
浮雲
事実と想像の共存

 

【著者プロフィール】
鄭 泳 文(チョン・ヨンムン)
1965年、慶尚南道咸陽に生まれる。
1996年、長編『やっと存在する人間』を発表して作品活動をスタートした。ソウル大学で心理学を勉強して、人間心理の本然の問題にこだわってきた作家である。韓国の文学では稀な死と救援の問題、人間の夢と本能的な悪魔性など、暗くて難解なテーマを扱ってきた。デビュー作以来、グロテスクな素材や残酷な悪魔性を描いており、また生活の倦怠感に耐えられない主人公を多く登場させている。しかし、鄭泳文の小説にはユーモアが必ず入っており、このユーモアは世界に対する虚脱な嘲弄から始まったもので、社会の不条理を知った後に感じる虚無感である。
最近の小説には動物や森のイメージが多く登場する。人間価値に対する否定が、人間ではない存在に対する関心へ移るようにしたのである。現実と幻想、人間と非人間、意味と無意味の区分を無力化している現実社会に対する嘲弄として評価される。代表作として長編小説『血の気のない独白』、『月に憑かれたピエロ』、『ワセリンブッダ』と小説集『黒い話の鎖』、牧神のある午後』などがある。
1999年、『黒い話の鎖』で第12回〈東西文学賞〉受賞。2012年、『ある作為の世界』で第17回〈韓戊淑文学賞〉、第43回〈東仁文学賞〉、第20回〈大山文学賞〉受賞。

【訳者プロフィール】
奇 廷 修(キ・チョンシュウ)
1971年、ソウル生まれ。
梨花女子大学政治外交学科卒業、梨花女子大学言論情報学科大学院修士
日本大学芸術大学院映像専攻修士
2012年、訳書『女子の言語を理解するための技術』出版。
2013年、大山文化財団翻訳部門選定。
現在、ハンギョレ新聞社ハンギョレの教育文化センター在職。

【監修者プロフィール】
保坂 祐二(ほさか・ゆうじ)
韓国ソウル在住。現在、世宗大学教養学部教授。
著書『朝鮮のソンビと日本の侍』、『日本の歴史を動かした女性たち』など。