書籍

『シュレーディンガー詩集 恋する物理学者』エルヴィン・シュレーディンガー

『シュレーディンガー詩集 恋する物理学者』
エルヴィン・シュレーディンガー
宮岡絵美 訳・編

四六判、並製、96ページ
定価:本体1,900 円+税
ISBN 978-4-86385-637-0 C0098

装幀・写真  毛利一枝
Artwork object : S.Luca.S(2022)
Mouri object collection

 


静かに満たされて眼を閉じる

時は止まり、すべての願いは沈黙する
そして広大な静寂の空間に溶けてゆく
しかしあなたは、遥かなる境界に目をひらく


エルヴィン・シュレーディンガー(1887-1961, Austria)が詩集を一冊残していることを知ったのは、詩を書き始めた頃でした。波動力学をつくり上げ、ポール・ディラックとともにノーベル賞を受けた物理学者でありながら、詩集を一冊残しているという事実。濃いコーヒーやお酒を嗜むような心持ちで、彼の詩情を楽しむことができたように思います。二度の世界大戦を越え、激動の人生を歩んだシュレーディンガーの作品は、一篇のなかでさえ、起伏に富んでいます。       
――訳者あとがきより


【著者プロフィール】
エルヴィン・シュレーディンガー (Erwin Schrödinger)

オーストリアの理論物理学者として知られる。1887-1961年。少年時代から多方面に興味と才能を示し、ギムナジウムでは自然科学の科目のほか、古典語文法の厳密さ、ドイツ詩の美を好んだ。ウィーン大学に学び、第一次世界大戦中には軍務につく。ド・ブロイの考えを拡張して「シュレーディンガーの波動方程式」を導き、物質の波動性に基づいた波動力学を提唱した。行列力学と波動力学の数学的等価性の証明など、量子力学の発展に大きく貢献した。1933年「新しい形式の原子理論の発見」により、ポール・ディラックとともにノーベル物理学賞受賞。著書に「生命とは何か」「わが世界観」がある。生涯を通じて共同研究者をもたず、独自の道を歩んだ孤高の研究者であった。ソルベー会議の際、リュックサックを背に駅からホテルまでを歩いた姿が、彼の人柄を示す逸話として語られている。
(参考: ブリタニカ国際大百科事典、日本大百科全書)


【訳者プロフィール】
宮岡絵美 (みやおか・えみ)

詩人。大阪府枚方市生まれ。京都工芸繊維大学繊維学部応用生物学科卒業。
地方公務員。増井哲太郎により作曲され、紀尾井ホールで初演された
組曲「平行世界、飛行ねこの沈黙」(2014年、カワイ出版)は神戸大学、早稲田大学、北海道大学、同志社大学、札幌市の合唱団等により演奏されている。
詩集「境界の向こう」(2015年、思潮社)「鳥の意思、それは静かに」(2012年、港の人)
詩集二冊とCDがハーバード大学図書館に所蔵。(2017年)
POETRY(Chicago)に詩作品掲載。(2022年)

 

【もくじ】

Ⅰ章
かくまわれて—Geborgen
若い愛—Junge Liebe
憧憬—Sehnsucht
影—Schatten
寓話あるいは放物線—Parabel
六月—Juni
恋のうた—Liebeslied
もうひとつの—Ein Anderes
第三の—Ein Drittes
蝶—Der Schmetterling
年月は去る—Die Jahre gehen
出会い—Begegnung
燃える灰—Glühende Asche
時と幸運—Zeit und Glück
なぜならば∵—An∵
仮面舞踏会—Kostümball
十月、メラーノにて—Oktober in Meran
失望—Der Enttäuschte
疑い—Der Zweifelnde
恋する詩人たち—Amantibus Poetis
あなたはわたしの全てを—Du hast mich ganz
忘我—Entrückung
チューリヒ—Zürich
白鳥—Schwäne
九月半ば—Mitte September
報われる—Lohn
予感—Ahnung

Ⅱ章  IN ENGLISCHER SPRACHE
恋する者の秘密—The lover in Search of a Confidant
祈り—Prayer
いつかきみは—I Wonder
愛のため息—A Love Sigh
いつかもしかしたら—Could it be?
海辺で—On the Shore
妖精—Faery

あとがき