Woman's Best 15 韓国女性文学シリーズ12
「終わりの始まり」끝의 시작
ソ・ユミ 著
金みんじょん 訳
四六、並製、176ページ
定価:本体1,600円+税
ISBN978-4-86385-538-0 C0097
装幀 成原亜美(成原デザイン事務所)
装画 都築まゆ美
恋の記憶、家族の記憶、残酷で美しい春の記憶。
ソ・ユミは、私たち自身の傷と記憶を呼び覚まし、
時の流れとは何かを伝えようとする。
私たちはいつだって、人生の新しい章を始められるのだ。
――櫻木みわ(小説家)
1970年代生まれの韓国女性作家、チョ・ナムジュ、ファン・ジョンウンなどと並び、韓国文学界を背負う一人であるソ・ユミ、待望の初邦訳
2022年10月上旬全国書店にて発売予定。
<あらすじ>
末期がんで苦しむ母の看病、妻との離婚を目前にし、幼いころの父の死が亡霊のように付きまとうヨンム。夫とはすれ違い、愛を渇望するも満たされず、若い男とのひとときの恋に走るヨンムの妻・ヨジン。貧困の連鎖から逃れられず、社会に出てもバイトを転々とし、恋人との環境の違いに悩むヨンムの部下ソジョンの物語とが交錯する。
「甘ったるい春夜の空気を物悲しく」感じる人々のストーリーは不幸という共通分母の中で一つになり、三人の人物が感じる「静かにうごめく喪失感」が小説の根底に流れている。それぞれがその喪失感を乗り越え、成長していく四月の物語を、やさしい視点で描き出す。
<訳者あとがきより>
「連合ニュース」はこの小説を「成長の物語」と評し、毎日経済は「別れの傷を癒やす間、桜は散り、五月の新芽が出る。作家は『終わりはついにやってきた新しい始まり』だと淡々と証言するのだ」と解釈した。本書は別れと喪失の物語であると同時に希望の物語でもある。原書の解説で小説家イ・スンウはこう述べている。「『切られた傷の上に貼るバンドエイド』のような小説だ。(中略)本書は貧しく疎外された人々の悲惨な現実を暴露し、貧しさが世襲される資本主義社会の構造的矛盾を批判するために声を上げる代わりに、彼らが作り出すぎこちない笑顔に注目する」。誰もが経験する恋人との別れ、家族の闘病や死、そしてそれを乗り越えようと必死でほほ笑む人々の健気さに引き込まれてしまう。
【著者プロフィール】
ソ・ユミ(徐柳美/서유미)
1975 年ソウル生まれ。2007 年「ファンタスティック蟻地獄」で文学手帳作家賞、同年「クールに一歩」で第1回チャンビ長編小説賞を受賞し、デビュー。都市に暮らす人々の孤独や葛藤を温かい眼差しで繊細に描く韓国を代表する女性作家。
短編集に『当分は人間』(2012)、『誰もが別れる一日』(2018)『今夜は大丈夫、明日のことはわからないが』(2022)、長編に『ファンタスティック蟻地獄』(2007)、『クールに一歩』(2007)、『あなたのモンスター』(2011)、『終わりの始まり』(2015)、『隙間』(2015)、『ホールディング、ターン』(2018)、『私たちが失ったもの』(2020)、エッセイに『ひとつの体の時間』(2020) などがある。本書が初邦訳。
【訳者プロフィール】
金みんじょん(きむ・みんじょん)
ソウル生まれ、東京育ち。10代で来日し、KBSラジオや京郷新聞などを通して日本のニュースを紹介し、また日本文化を韓国に伝える活動をしている。
慶應義塾大学総合政策学部卒業、東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士課程単位取得退学。
韓国語の著書に『母の東京 ― a little about my mother』『トッポッキごときで』、共著書に『小説東京』『SF金承玉』、韓国語への訳書に『那覇の市場で古本屋』(宇田智子著)、『渋谷のすみっこでベジ食堂』(小田晶房著)、『太陽と乙女』(森見登美彦著)、『縁を結うひと』『あいまい生活』『海を抱いて月に眠る』(以上3冊、深沢潮著)など。日本語への訳書は、『私は男でフェミニストです』。
掲載情報
統一日報(1/18)「韓国書籍売り上げベスト」
《彼らの人生は決して特殊なものではないが、もどかしいほどのすれ違いや微かな触れ合いの中から、やがて痛みや秘密が育っていく。終わりを経験した彼らは、新しいはじまりに向かって歩き出せるだろう》
福島民報(1/14)「新刊抄」
《3人の過去と行く末が、ソウルの桜の情景と共につづられる。韓国女性作家たちによる現代小説シリーズ第12弾》