書籍

『私のおばあちゃんへ』ユン・ソンヒほか

Woman's Best 13 韓国女性文学シリーズ10​
私のおばあちゃんへ나의 할머니에게​

ユン・ソンヒ、ペク・スリン、カン・ファギル、ソン・ボミ、チェ・ウンミ、ソン・ウォンピョン 著​

橋本智保 訳

四六、並製、192ページ
定価:本体1,600円+税
ISBN978-4-86385-483-3 C0097

装幀 成原亜美(成原デザイン事務所)
装画 田中千智


年老いた女になるつもりはなかった。
その日その日を生きているうちに、いまにたどり着いただけ。
いまという日は、自分とはまったく関係のない他人のものでなければならなかった。
6人の女性作家が描く“おばあちゃん”アンソロジー


おばあちゃん世代の作家オ・ジョンヒ(李箱文学賞、東仁文学賞と、韓国の二大文学賞を受賞。『鳥』で2003年ドイツのリベラトゥル賞受賞。現在は東仁文学賞の審査委員)は次のように述べている。
この小説集は、現代韓国文学の中心で熾烈な執筆活動をしている作家、六人六色の饗宴であると同時に、長い人生を送ってきたすべての「おばあちゃん」に捧げる賛歌でもある。老いていく私自身の姿や複雑な内面が見え、また、私が通過してきた道を生きている娘が、私自身が向かっている時間を生きた母親の姿がはっきりと見える。この作品集は老年に対する通念や偏見を破り、かといって下手なあきらめや和解も見られず、むしろ生の不可解さ、人間の存在の神秘さ、長い年月に堪えてきた人が放つ香りのようなものを読み手に伝える。紆余曲折と悲しみと心の傷によって、人間はかくも愛すべき存在でもあるのだということも。
(訳者あとがきより)


<あらすじ>
いつかおばあちゃんになることを夢見ていたのに「きのう見た夢」(ユン・ソンヒ)。

残されたフランスでの日記を手掛かりに孫が想像で描いたおばあちゃんの最後の恋「黒糖キャンディー」(ペク・スリン『惨憺たる光』)。

認知症になったおばあちゃんが何度も繰り返し伝えたのはトラブルの多い孫の未来のためだった「サンベッド」(カン・ファギル『別の人』)。

厳しかったおばあちゃんから遺された屋敷を処分するために久しぶりに足を運んだ私は、取り返しのつかない過去に引き戻される「偉大なる遺産」(ソン・ボミ『ヒョンナムオッパヘ』収録「異邦人」)。

女三世代で行ったテンプルステイで母の意外な一面を知り、母にだんだんと似てくる自分に気づく、ある穏やかな秋の日「十一月旅行」(チェ・ウンミ『第九の波』)。

ひとりで堅実に生きてきたはずが、いつの間にか老人だけのユニットに暮らす羽目に。二十一世紀後半の近未来を描くディストピア小説「アリアドネーの庭園」(ソン・ウォンピョン『アーモンド』『三十の反撃』)。

ミステリー、SF、ロマンス、家族ドラマなど、老いを描いた6編

2021年9月上旬全国書店にて発売。
 

【目次】
きのう見た夢 ユン・ソンヒ
黒糖キャンディー ペク・スリン
サンベッド カン・ファギル
偉大なる遺産 ソン・ボミ
十一月旅行 チェ・ウンミ
アリアドネーの庭園 ソン・ウォンピョン   試し読みはこちら
訳者あとがき
 

【著者プロフィール】
ユン・ソンヒ(尹成姬/윤성희)

1973年生まれ。1999、東亜日報新春文藝に短編小説「レゴでつくった家」が当選する。短編集に『レゴでつくった家』『そこに、あなた?』『風邪』『笑うあいだ』『枕をする』『日々、エイプリルフール』、中編小説に『やさしい人』、長編小説に『見物人たち』などがある。

ペク・スリン(白秀麟/백수린)
1982年生まれ。2011年、京郷新聞新春文藝に短編小説「嘘の練習」が当選する。短編集に『ポール・イン・ポール』『惨憺たる光』『夏のヴィラ』、中編小説に『親愛なる、親愛なる』などがある。

カン・ファギル(姜禾吉/강화길)
1986年生まれ。 2012年に京郷新聞新春文藝に短編小説「部屋」が当選する。短編集に『大丈夫な人』『ホワイト・ホース』、長編小説に『別の人』などがある。

ソン・ボミ(孫步侎/손보미)
1980年生まれ。2011年、東亜日報新春文藝に短編小説「毛布」が当選する。短編集に『彼らにリンディ・ホップを』『優雅な夜と猫たち』『マンハッタンの蛍』、長編小説に『ディア・ラルフ・ローレン』『小さな町』などがある。

チェ・ウンミ(崔銀美/최은미)
1978年生まれ。2008年『現代文学』の新人推薦に短編小説「泣いて行く」が当選する。短編集に『あまりに美しい夢』『目連正伝』『雪で作った人』、中編小説に『昨日は春』、長編小説に『第九の波』などがある。

ソン・ウォンピョン(孫元平/손원평)
1979年生まれ。2016年、長編小説『アーモンド』で第十回チャンビ青少年文学賞を受賞。短編集に『他人の家』、長編小説に『三十の反撃』『プリズム』がある。現在、映画監督、シナリオ作家としても活躍している。

【訳者プロフィール】
橋本智保(はしもと・ちほ)
1972年生まれ。東京外国語大学朝鮮語科を経て、ソウル大学国語国文学科修士課程修了。
訳書に、鄭智我『歳月』、千雲寧『生姜』(共に新幹社)、李炳注『関釜連絡船(上・下)』(藤原書店)、朴婉緒『あの山は、本当にそこにあったのだろうか』(かんよう出版)、ウン・ヒギョン『鳥のおくりもの』(段々社)、クォン・ヨソン『春の宵』(書肆侃侃房)『レモン』(河出書房新社)、キム・ヨンス『夜は歌う』『ぼくは幽霊作家です』、チョン・イヒョン『きみは知らない』(共に新泉社)、チェ・ウンミ『第九の波』(書肆侃侃房)など。

書評情報

西日本新聞(10月9日)
『私のおばあちゃんへ』 ユンソンヒなど著 橋本智保訳
《現代の韓国文壇で活躍する6人の作家による短編小説集

統一日報(10月20日)

日々を積み重ねたどり着いた今 6人の女性作家が「老い」を描く

東京新聞2022年1月25日 評者=すんみさん
《(…)一筋縄ではいかない。本書の作品群はそうした「おばあちゃん」の複雑な人生を複雑なままに捉えようとするまなざしが通底している》

通販生活22年春号 評者=斎藤 真理子

イデオロギーを描く文学から個人に光を当てた文学へ