書籍

『優しい嘘』 キム・リョリョン

Woman's Best 5 韓国女性文学シリーズ2
『優しい嘘』우아한 거짓말
金 呂 玲キム・リョリョン 著
金 那 炫キム・ナヒョン 訳

四六、並製、264ページ
定価:本体1,600円+税
ISBN978-4-86385-266-2 C0097

装幀 宮島亜紀
装画 小玉裕子

韓国で80万部のベストセラーとなり映画も大ヒットの『ワンドゥギ』につづく映画化2作目。

赤い毛糸玉に遺されたひそやかなメッセージ

とつぜん命を絶った妹の死の真相を探るうちに
優しかった妹の心の闇に気づく姉。
苦く切ない少女へのレクイエム。

2017年6月中旬全国書店にて発売。

著者プロフィール

金呂玲(キム・リョリョン)
1971年、ソウル生まれ。ソウル芸術大学で文芸創作を学ぶ。『私の胸の中に海馬がいる』で文学ドンネ児童文学賞大賞を受賞し、『記憶を持ってきた子供』で馬海松文学賞を受賞。 第1 回創批青少年文学賞を受賞した『ワンドゥギ』は、ベストセラー(2008年)になり注目をあびる。その他、長編童話に『騒々しいプルンマンション』等がある。

訳者プロフィール

金那炫(キム・ナヒョン)
釜山で生まれ海辺で育つ。西江大学にて政治外交と史学を専攻。上智大学に交換留学した際、日本の文化に接する。ITコンサルタント、銀行員、内部監査人等多様な職種を経て、韓国の文化を日本に伝える翻訳家を目指している。

書評より

一晩に三回読んで、三回とも泣いた

『優しい嘘』はある少女の死をめぐる「事実」と「真実」のパズル合わせだ。確固としてある「事実」はチョンジが死んだということだ。「真実」は目に見えなくても厳として存在する「あること」だ。この険しい警戒線上に著者はパズルのピースをばらばらにしておく。推理小説を読むような構成や伏線、殴って逃げる変則ボクサーのような台詞、抑えた叙述、刀のように素早いが重い内傷を負わせるキム・リョリョン独特の文章は、読者の硬い壁を少しずつ徹底的につき崩していく。告白になるけれど、わたしは本文半ばにたどりつく前にすでに深い傷を負った。その傷をえぐるように「真実」がカウンターパンチを飛ばしてくる。殴られて得たのは、悲しみや感動という名では縛られない「あること」なのだ。それを名づけるのは読者としての楽しみだ。読者はこの作品によって冷静で、強くて熱い家族に出会うだろう。彼らが描く解決法や著者が送るメッセージは、内傷を甘んじて受け入れるだけの価値があるにちがいない。
-小説家 チョン・ユジョン(『七年の夜』の著者)

目次

はかない命にしがみついて
雹まじりの雨 
足長ピエロ 
傷心
五つの封印玉
そうやって生きるのよ
行き場のない許し
優しい嘘

あとがき 金呂玲
訳者あとがき 金那炫