『詩と散策』시와 산책 Poetry and Walks
ハン・ジョンウォン 著
橋本智保 訳
四六変形並製、152ページ
定価:本体1,600円+税
ISBN978-4-86385-560-1 C0098 3刷
装幀 成原亜美(成原デザイン事務所)
装画 日下明
散歩を愛し、猫と一緒に暮らす詩人ハン・ジョンウォンが綴るエッセイ
雪の降る日や澄んだ明け方に、ひとり静かに読みたい珠玉の25編
オクタビオ・パス、フェルナンド・ペソア、ローベルト・ヴァルザー、シモーヌ・ヴェイユ、パウル・ツェラン、エミリー・ディキンソン、ライナー・マリア・リルケ、シルヴィア・プラス、金子みすゞ、ボルヘス……
『詩と散策』は、著者のハン・ジョンウォンがひとり詩を読み、ひとり散歩にでかけ、日々の生活の中で感じたことを記している、澄みきった水晶のようなエッセイ集だ。読者は、彼女の愛した詩人たちとともに、彼女が時折口ずさむ詩とともに、ゆっくりと散歩に出かける。
2023年2月全国書店にて発売。
【著者プロフィール】
ハン・ジョンウォン 한정원
大学で詩と映画を学んだ。
修道者としての人生を歩みたかったが叶わず、今は老いた猫と静かに暮らしている。
エッセイ集『詩と散策』と詩集『愛する少年が氷の下で暮らしているから』(近刊)を書き、いくつかの絵本と詩集を翻訳した。
【訳者プロフィール】
橋本智保(はしもと・ちほ)
1972年生まれ。東京外国語大学朝鮮語科を経て、ソウル大学国語国文学科修士課程修了。
訳書に、キム・ヨンス『夜は歌う』『ぼくは幽霊作家です』(新泉社)、チョン・イヒョン『きみは知らない』(同)、ソン・ホンギュ『イスラーム精肉店』(同)、ウン・ヒギョン『鳥のおくりもの』(段々社)、クォン・ヨソン『レモン』(河出書房新社)『春の宵』(書肆侃侃房)、チェ・ウンミ『第九の波』(同)ユン・ソンヒほか『私のおばあちゃんへ』(同)など多数。
【目次】
宇宙よりもっと大きな
寒い季節の始まりを信じてみよう
散歩が詩になるとき
幸福を信じますか?
11月のフーガ
悲しみ、咳をする存在
果物がまるいのは
夏に似た愛
心のかぎりを尽くして来たから
永遠のなかの一日
海から海のあいだに
なにも知りません
よく歩き、よく転びます
国境を越えること
みんなきれいなのに、わたしだけカンガルー
ひと晩のうちにも冬はやってくる
夢とおなじ材料でできている
夕暮れただけ
窓が一つあれば十分
灰色の力
真実はゆっくりとまぶしくなければ
猫は花の中に
いくつかの丘と、一点の雲
今日はわたしに、明日はあなたに
彼女の歩く姿は美しい(送らない手紙)
日本の読者のみなさんへ
訳者あとがき
【本文中に出てくる詩人や作家たち】
オクタビオ・パス/フェルナンド・ペソア/ウォレス・スティーヴンズ/アーチボルト・マクリーシュ/ローベルト・ヴァルザー/シモーヌ・ヴェイユ/パウル・ツェラン/セサル・バジェホ/ガブリエラ・ミストラル/ヘンリー・デイヴィッド・ソロー/カミュ/源信明/ウラフ・H・ハウゲ/エミリー・ディキンソン/アンナ・アフマートヴァ/ライナー・マリア・リルケ/フォルーグ・ファッロフザード/シルヴィア・プラス/チェ・ヨンミ/金子みすゞ/ジョージ・ゴードン・バイロン/ボルヘス
書評など
(3/29)毎日新聞 3月 私のおすすめ 評者=大塚真祐子さん(書店員)
《歩くことと先人の詩の言葉を著者の内奥で見つめ合わせ、その対話に静かに耳を澄ますような美しいエッセーだ。(…)著者の眼差しをとおして読むと、あらためてその詩に出会ったような喜びをおぼえる》
「東京人」2023年6月号 今月の東京本 評者=小池昌代さん(詩人・小説家)
《よく知らない詩人らの詩が新雪のように心に積もったのは当然としても、よく知る詩人の、読んだかもしれない詩までもが新鮮に立ち上がってきたのは驚きだった。作品に積もっていた時間の埃が、見事、払われている。柔らかく直感的で情緒的に見える文章だが、一貫して強い真情が通っている》
「現代詩手帖」2023年5月号 詩書月評
《日々の生活の中で感じたこと、歩きながら目に留まったことを、時に古今東西の詩人の言葉に重ねたエッセイ集。文章は、空を見ながら歩いているうちにいつのまにか空を歩いているような、未知の旅のはじまりを思わせるような透明感があり、心つかまれる》
共同通信(北日本新聞、神戸新聞、信濃毎日新聞、他各紙) 評者=金原瑞人
《11月に対する偏愛を語った章は素晴らしい。11は2本の木に似ているというところから、まったく違う場所で生きてきた葉と大地の出会いが語られる》
現代詩手帖年鑑 評者=夏野雨
《読みやすく、詩と文章が適度な距離を持っているので、読むうちに詩の中を散策している気になってくる》