『人殺しは夕方やってきた マルレーン・ハウスホーファー短篇集』
マルレーン・ハウスホーファー
松永美穂訳
四六判、上製、244ページ
定価:本体2,100円+税
ISBN978-4-86385-621-9 C0097
装幀・装画 宮島亜紀
山の中でたった一人、壮絶なサバイバル闘争を繰り広げる女性を描いた長篇小説『壁』で、世界を震撼させたマルレーン・ハウスホーファー。
多くのフェミニスト、作家たちに影響を与えた彼女の、知られざる短篇小説名作集がついに邦訳!
西崎憲さん(作家・翻訳家・音楽家・「惑星と口笛」主宰)賞賛!!
ここが抒情の終着点 先はない
なんというみずみずしさ。本からこぼれだすのは、少女や友達、家や風景、おもしろい夢をみる女性や人を殺してしまった男性たち。永遠は子供の形で現れ、細部は不可知を囁く。マルレーン・ハウスホーファーはドイツ語園で最良最高の抒情を達成した。
収録作はオーストリアの村で生まれ育ったマルレーン・ハウスホーファーの少女時代を彷彿させる。共に暮らした人々や動物たち……そして、平和な暮らしを一変させる戦争の影。
文学ムック「たべるのがおそい」vol.4収録の「さくらんぼ」「雌牛事件」「フォン・ガイエン氏の夜の出逢い」ほか、かなしみにユーモアをまぶした切なく心あたたまる作品集。
2024年4月発売。
【目次】
1 少女時代の思い出
美しきメルジーネ
ぞっとするような話
雌牛事件
さくらんぼ
初めてのキス
おばあちゃんが死ぬ
ドラゴン
懺悔
2 大人の生活
小さな幸せ
人殺しは夕方やってきた
日曜日の散歩
おもしろい夢を見る女性
ミルテの木、もしくは軽率なマティルデ
フォン・ガイエン氏の夜の出逢い
お話
とりわけ奇妙な愛の物語
人喰い
3 戦争の影
クワガタムシ
司令官の死
一九四五年の春
国家の反逆者
間借り人たちのクリスマス
恐るべき忠節
ウィロー夫妻
変身
もろびと声あげ(イン・ドゥルチ・ジュビロ)
訳者あとがき
【著者プロフィール】
マルレーン・ハウスホーファー(Marlen Haushofe)
1920年生まれのオーストリアの作家。ウィーンとグラーツの大学でドイツ文学を学び、夫と二人の子どもとともにシュタイヤーで暮らし、1970年に亡くなった。オーストリア文学史における非常に重要な女性作家の一人とされる。シュニッツラー賞やオーストリア国家賞(文学部門奨励賞)を受賞している。没後、代表作『壁』が世界的に有名になった。
【翻訳者プロフィール】
松永美穂(まつなが・みほ)
翻訳家、早稲田大学文学学術院教授。ベルンハルト・シュリンク『朗読者』(新潮社)の翻訳で2000年に毎日出版文化賞特別賞受賞。カトリーン・シェーラー『ヨハンナの電車のたび』(西村書店)で2015年日本絵本大賞翻訳絵本賞受賞。そのほかヘルマン・ヘッセ『車輪の下で』(光文社古典新訳文庫)やインゲボルク・バッハマン『三十歳』(岩波文庫)など。
書評・掲載情報
毎日新聞 (2024年6月8日)「今週の本棚」 評者=川本三郎さん
《ユーモアと優しさ、そして哀しみに満ちた短篇集》《作家は第二次世界大戦を経験している。そのため戦争ものが読ませる》
本の雑誌(2024年7月号)「新刊めったくたガイド」 評者=石川美南さん
《隅から隅まで面白く、そして奥深い短編集》《こんなすばらしい作家がいたのかと、今さら目を見張る思いだった》
西日本新聞(2024年7月13日)
《哀歓が交錯する短編26作を収録》《特に「もろびと声あげ(イン・ドゥルチ・ジュビロ)」は、戦争で家族を奪われた少女の物語で深い余韻を残す》
図書新聞(2024年7月20日号) 評者=熊谷哲哉さん
《これらの作品には、ハウスホーファー自身が生きてきた時代が刻印され、彼女自身の記憶そして彼女が出会い、見てきたさまざまな人生が反映されている》
クロワッサン(2024年9月10日号) 評者=瀧井朝世さん
《どれも他人事ではなく自分事として読めてしまうのは私だけだろうか。もちろん。作者が巧みなのは、いうまでもない》