『サメと救世主』
カワイ・ストロング・ウォッシュバーン
日野原慶訳
四六判、並製、424ページ
定価:本体2,400円+税
ISBN978-4-86385-616-5 C0097
装幀 山田和寛(nipponia)
装画 原倫子
サメに救われた少年には奇跡の力が宿りはじめる。これは真実か、ただのイカサマか?
ハワイで生まれ育った注目の作家によるデビュー長編!
はじまりは1995年。ハワイ島に暮らすフローレス家は、「豊かな」生活を求めて、オアフ島を目指す。そのさなか、息子のナイノアが海に落ち、サメによって助けだされる。サメに救われた少年には、奇跡の力が宿りはじめる。これは真実か、あるいはただのイカサマか?
こうして家族の未来は大きなうねりに巻きこまれる。時を2000年以後に移して、描きだされるのは、楽園ではないハワイ。それは現代の豊かさをめぐるアメリカの矛盾、世界の矛盾を映しだす場だ。ほんとうの「豊かさ」とは何か━━。
ハワイとアメリカ本土(メインランド)を舞台に、ある一家の波乱にみちた運命がつづられる。バラク・オバマのベストブックリスト(2020年版)にも選ばれた、ハワイで生まれ育った作家による渾身のデビュー長編。
明かされる真実へと、ぐいぐい引きこまれろ。ウォッシュバーンはとてつもなく優れた新時代の書き手だ。この長大な家族の物語は、サメの牙のようにするどい。ページははじけて火花を散らす、そして、君をすっかり変えてしまう。
━━━━━トミー・オレンジ(『ゼアゼア』)
古い神話と新たな現実がぶつかり、愛と悲しみが手をつなぎ、信仰と魔術がぎちぎちとこすれあい、喜劇がくるりと悲劇に変われば、まったく新しいなにかが生まれる。そのすべてがとめどない感傷にのって語られる、じりじり焦げるほどに。
━━━━━マーロン・ジェイムズ(『七つの殺人に関する簡潔な記録』)
「海、自然、果物、楽園━━ハワイときいて、多くの日本人がとても良いイメージを抱くことでしょう。楽園としてのハワイ。それを期待してこの小説を読むと、あれ? と思うかもしれません。わたしは思いました。あれ? この小説に、楽園はない。主人公であるハワイ系フィリピン人のフローレス一家が生きる現代のハワイは、楽園とはかけはなれた苦しい生活が強いられる場所です。サバイバルという言葉がふさわしいほどです」(訳者あとがきより)
2024年3月に全国書店にて発売。
【著者プロフィール】
カワイ・ストロング・ウォッシュバーン(Kawai Strong Washburn)
ハワイ島のハマクアコーストに生まれ育つ。2020年出版の『サメと救世主』により、PEN/Hemingway Award for Debut NovelとMinnesota Book Awardを2021年に受賞。現在は、ミネアポリス在住。
【訳者プロフィール】
日野原慶(ひのはら・けい)
大東文化大学にてアメリカ文学を教えている。共訳書にモナ・アワド『ファットガールをめぐる13 の物語』、共著に『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』(ともに書肆侃侃房)。
書評・掲載情報
図書新聞 (2024年9月9日) 評者=岡嵜郁奈さん
《映画にもゲームにもない、想像力を十全に使う快楽。ウォッシュバーンの瑞々しい文体と人物描写は、読み手にその喜びをぞんぶんに味わわせてくれる》
《想像力だけでは及ばない何かが存在し、分からないまま物語にのめり込む。それが読後も問いとして生き続ける》