書籍

『埃だらけのすももを売ればよい ロシア銀の時代の女性詩人たち』高柳聡子

『埃だらけのすももを売ればよい ロシア銀の時代の女性詩人たち』
高柳聡子

四六判、上製、184ページ

定価:本体2,000円+税

ISBN978-4-86385-604-2 C0095

装幀 名久井直子

装画 Varvara Stepanova

 

詩集とはある世界観の具現であった

ロシア文学におとずれた興隆期「銀の時代」(1890~1920年代)。ペテルブルクの古書店で偶然見つけた詩集を手がかりに、100年前の忘れられた15人の女性詩人たちのことばを拾い上げる。翻訳した『女の子たちと公的機関』が増刷を重ねる著者による「web侃づめ」の好評連載が書き下ろしを加えて単行本化!

 

鮮烈である。もう埋もれさせはしない。忘れ去られ、あるいは神秘化された女性詩人たちの生き様と詩作を掬い出すかのようなこの本は、そんな祈りにも思える。

━━━━━水上文さん

 

著者は温かい共感によって女性詩人たちを照らし出し、魅力的な姿を浮かび上がらせる。(略)百年の埃を払うと、みずみずしい果実のような詩の言葉が蘇ってくる。

━━━━━沼野充義さん(毎日新聞3/16)

 

彼女たちの作品とその翻訳はとても美しく、その言葉の力、表現力に圧倒された。詩とともに描き出される女性詩人たちのストーリーが多彩で面白い。ここにいるのは、知らずにいたことを悔やむような女性たち、文学史の周縁に押しやってはいけない女性たちだ。

━━━━━山崎まどかさん(日本経済新聞「THE NIKKEI MAGAZINE」4/5)

 

女性解放運動の夜明けを生きた彼女たちの詩とはいったいどのようなものか。その一端を知る機会を得たことの意義は大きい。(略)本書の詩の数々に、またその言葉の奥にひそむ無数の女性たちの声に耳を傾けるとき、私たちにはまた新しい地平が見えてくるだろう。

━━━━━小津夜景さん(冊子「書肆侃侃房の海外文学」)

 

歴史的にも意義深い一冊だ。(略)喪失と孤独と抵抗の言葉の一つ一つが現在との時空間の距離を消し去るだろう。

━━━━━鴻巣友季子さん週刊新潮4/25

 

今読まれるべき本だ。(略)歴史に埋もれた女性詩人たちの生を引き受けた本書は、翻訳家としての使命感と愛にあふれている。

━━━━━小磯洋光さん共同通信配信

 

作者ごとに詩と伝記的な内容が少しずつ紹介されていて、魅力のある入門書的な本となっている。(略)ウクライナの地名がたびたび出てくる。人類にとって必要なのは戦争ではなく、文化や芸術を通して、生きる時間を分かち合おうとする心だろう。詩もまた遠くの人たちの心を運ぶ。

━━━━━蜂飼耳さん毎日新聞4/17

 

「銀の時代」は十月革命によって関係者も時代精神も過去のものとされてしまったので、こうやってまとめて作品に接する機会は貴重である。(略)詩の研究者である高柳自身が素晴らしい言葉の遣い手であることを余すところなく示している。

━━━━━池田嘉郎さん研究ブログ3/28

 

2024年2月下旬に全国書店にて発売。

 

【「はじめに」より】

わずか15人しか紹介できないのだが、彼女たちの詩の向こう、言葉の向こう、生の向こうに、その他の無数の女性たちの声を感じ取っていただけたらとても嬉しい。戦争や革命のどよめきのなかで世界のあちこちに散らばっていき、今ではどこに眠っているのかわからない詩人も多い。だからこそ、同じ言語で詩を残した女性たちは、こうして一冊の書物の中に久方ぶりに集うことを喜んでくれるような気がしている。(高柳聡子)

 

【目次】

まえがき

1 遠い異国を見つめて アデリーナ・アダーリス

2 もっとも忘れられた詩人 マリア・モラフスカヤ

3 戦争と詩を書くこと アンナ・アフマートワ

4 詩は私の祈りである ジナイーダ・ギッピウス

5 二つの魂を生きて チェルビナ・デ・ガブリアック

6 私の身体は私のもの マリア・シカプスカヤ

7 誰も見ぬ涙を詩にして リュボーフィ・コプィローワ

8 風そよぐ音にも世界は宿り エレーナ・グロー

9 「女の言語」を創出せよ ナデージュダ・ブロムレイ

10 昼の太陽と幸福と、そして夜の闇と テフィ

11 すべての詩は啓示となる アデライーダ・ゲルツィク

12 わが歌は私が死んでも朝焼けに響く ガリーナ・ガーリナ

13 テクストの彼岸にいる私 リジヤ・ジノヴィエワ=アンニバル

14 ロシアのサッフォーと呼ばれて ソフィア・パルノーク

15 私は最期のときも詩人である マリーナ・ツヴェターエワ

「銀の時代」主要人物

参考文献

あとがき

 

【著者プロフィール】

高柳聡子(たかやなぎ・さとこ)

1967年福岡県生まれ。ロシア文学者、翻訳者。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。おもにロシア語圏の女性文学とフェミニズム史を研究中。著書に『ロシアの女性誌━━時代を映す女たち』(群像社、2018年)、訳書にイリヤ・チラーキ『集中治療室の手紙』(群像社、 2019年)、ローラ・ベロイワン「濃縮闇━━コンデンス」(『現代ロシア文学入門』垣内出版、2022年所収)など。2023年にロシアのフェミニスト詩人で反戦活動家のダリア・セレンコ『女の子たちと公的機関 ロシアのフェミニストが目覚めるとき』(エトセトラブックス)の翻訳を刊行。

書評・掲載情報

図書新聞 7月27日号 「2024年上半期読者アンケート」 評者=永田千奈さん
《戦争と暴政にうんざりする日々のなかで、海外文学も詩歌も、まだまだ終わりじゃないと思えた》《激動の時代を生きた女性詩人たちの作品を高柳聡子氏が詩訳と解説により現代に呼び起こした》