『精神の生活』
クリスティン・スモールウッド
佐藤直子訳
四六判、並製、280ページ
定価:本体2,100円+税
ISBN978-4-86385-587-8 C0097
装丁 成原亜美(成原デザイン事務所)
装画 塩川いづみ
このままならない身体とのつきあい方を、誰も教えてくれない。トイレの個室で不安をひとり抱きしめているひとがいる。そこで何が起こっているか、あなたは本当に知っているだろうか。
────────永井玲衣(哲学研究者/『水中の哲学者たち』)
この痛みを何と呼んだらいいのか? 「流産」というテーマを克明かつ赤裸々に描いた傑作小説。
不安定な地位にある大学非常勤講師のドロシーは、図書館のトイレで出血を確認する。流産したことを親友にも母親にも打ち明けることはできない。大学で講義し、セラピーに通い、産婦人科を訪れるが、どこにいても何をしていても世界から認めてもらえない気がしてしまう。3月の終わりからの1ヶ月半、予測不能なキャリアのなかで、自分の身体に起きた「流産」という不可解な出来事と知性によってなんとか折り合いをつけていく。
「TIME」年間トップテン・フィクション(2021年)選出!
2023年8月発売。
【目次】
三月の終わり
その翌日
五日後
数週間後
翌週の土曜の夜
十日後
日本の読者への手紙
訳者解説
【著者プロフィール】
クリスティン・スモールウッド(Christine Smallwood)
2014年にコロンビア大学で英文学の博士号を取得し、これまで5本の短編小説をThe Paris Review、n+1、Vice などの文芸誌で発表している。また数多くの書評やエッセイをThe New Yorker、Bookforum、The New York Times Magazine、Harper’s Magazine 等に寄稿する批評家でもある。現在、ブルックリンに夫と二人の息子と住んでいる。
【訳者プロフィール】
佐藤直子(さとう・なおこ)
東京都内の大学で非常勤講師として英語を教えている。現代アメリカ小説における「偶然性」のテーマに関心がある。
神戸新聞(9/30)読書欄 評者=江南亜美子
《出産に比べて声高に語られることが少なく、かつ当人の心身に大きな影響を及ぼす出来事をこんなふうに描くとは!人生の終わらなさ、そのにべもない事実を、アイロニーとユーモアをまぶして提示した本作の読後感は、決して苦いだけではなく味わい深い》
週刊読書人(11/10)文学芸術 評者=太田明日香
《選択は権利であり、力だ。けれど、選択できなかったからダメだというわけではない。これはそんな人生のままならなさに直面した一人の女性の、率直な記録なのだ》