『象の旅』
ジョゼ・サラマーゴ
木下眞穂訳
四六判、上製、216ページ
定価:本体2,000円+税
ISBN978-4-86385-481-9 C0097 3刷
装幀 成原亜美
象は、大勢に拍手され、見物され、あっという間に忘れられるんです。
それが人生というものです。
ノーベル賞作家サラマーゴが最晩年に遺した、史実に基づく愛と皮肉なユーモアに満ちた傑作。
1551年、ポルトガル国王はオーストリア大公の婚儀への祝いとして象を贈ることを決める。象遣いのスブッロは、重大な任務を受け象のソロモンの肩に乗ってリスボンを出発する。
嵐の地中海を渡り、冬のアルプスを越え、行く先々で出会う人々に驚きを与えながら、彼らはウィーンまでひたすら歩く。
時おり作家自身も顔をのぞかせて語られる、波乱万丈で壮大な旅。
「ささやかで不条理な奇跡の連続」
(アーシュラ・K・ル=グウィン)
★アーシュラ・K・ル=グウィンの『象の旅』評はこちら
「サラマーゴが、その人生の終わりに近くで書いた、愛嬌たっぷりの作品。『象の旅』は皮肉たっぷりで共感を豊かに誘う語りの中に、人間の本質についてのウィットに富んだ思索と、人間の尊厳を侮辱する権力者への揶揄を定期的に挟み込んでくる」(ロサンゼルス・タイムズ)
「サラマーゴは(……)この奇妙ながらも読み進めずにはいられない物語を紡いだ。サラマーゴがシュールで魅力的な散文の巨匠としてこれからも人々の記憶にのこるのはなぜか、この物語が完ぺきな例である」(GQ)
2021年10月上旬全国書店にて発売。
★『象の旅』完成までを追ったドキュメンタリー映画「ジョゼとピラール」(日本語字幕付き)はこちら
【著者プロフィール】
ジョゼ・サラマーゴ(José de Sousa Saramago)
1922年、ポルトガルの小村アジニャガに生まれる。様々な職業を経てジャーナリストとなり50代半ばで作家に転身。『修道院回想録』(82)、『リカルド・レイスの死の年』(84)、『白の闇』(95)で高い評価を得て、98年にノーベル文学賞を受賞。ほかに『あらゆる名前』(97)、『複製された男』(2002)など。2010年没。
【訳者プロフィール】
木下眞穂(きのした・まほ)
上智大学ポルトガル語学科卒。ポルトガル語翻訳家。訳書に『ブリーダ』(パウロ・コエーリョ)、『忘却についての一般論』(ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ)、『エルサレム』(ゴンサロ・M・タヴァレス)など。『ガルヴェイアスの犬』(ジョゼ・ルイス・ペイショット)で2019年に第5回日本翻訳大賞を受賞。
書評ほか
NHK「ラジオ深夜便」(11/21放送) 評者=永江朗さん
《象の長旅を波乱の冒険記としてみごとに描き出す。しかも作中に時々顔を出し物語をかき回す。形容しがたい異色の傑作》
京都新聞(11/27) 評者=鵜飼慶樹さん(京都岡崎 蔦屋書店)
《象と象遣いの交流と旅の軌跡を、共に旅するように堪能してほしい》
《動物が好きな人、歴史が好きな人、そしてサラマーゴをもっと知りたい人にすすめたい一冊だ》
聖教新聞(12/14)
《読後に残る人間の生きた感触。これがサラマーゴの文学だ》
《旅の途中でふんだんに挿入される諷刺や箴言も本書の魅力である。〔……〕鋭利な人間観や死生観が刻まれる》
西日本新聞(12/18) 評者=河野聡子さん
《歴史と想像が絡まるところこそ本書の味わいの要である。〔……〕老境の達観や叡智を感じさせる作家の声がページをめくるたびに立ち上がる》
図書新聞(12/18) 評者=滝野沢友理さん
《語り手であるサラマーゴのユーモアと皮肉交じりの声が絶妙に再現されている》
共同通信配信(沖縄タイムス12/18ほか) 評者=鈴木沙巴良さん
《ラストで描かれる旅路のその後が胸に響く、ノーベル賞作家サラマーゴの最晩年の佳品だ》
クロワッサン(12/25) 評者=瀧井朝世さん
《身勝手な人々に振り回されながらも、実直に人生&象生を歩んだ彼らがとても愛おしくなる》
本の雑誌(22年1月号) 評者=藤ふくろうさん
《これほど奇妙な旅が実在したことに驚き、わずかな史実から想像力をふくらませた作家の手腕にうなる。世の中には、驚嘆すべき物語がたくさんある》