書籍

『白い鶴よ、翼を貸しておくれ』ツェワン・イシェ・ペンバ

白い鶴よ、翼を貸しておくれ
チベットの愛と戦いの物語
WHITE CRANE, LEND ME YOUR WINGS: A Tibetan Tale of Love and War
ツェワン・イシェ・ペンバ 著
星泉 訳

四六、並製、544ページ
定価:本体2,500円+税
ISBN978-4-86385-421-5 C0097

装幀 成原亜美
装画 Nicholas Roerich

 

秘められた谷で若き戦士たちは愛するもの、愛する谷を守るため剣を取った。谷の人々は時代に翻弄されつつ、もぎとられても切り裂かれても信じる道を進み、誇りと愛を失わなかった。その先が地獄とわかっていても。
生きて、誓いを守るために・・・・・・。
――『月と金のシャングリラ』漫画家・蔵西

 

亡命チベット人医師が遺したチベット愛と苦難の長編歴史小説

1925年、若きアメリカ人宣教師スティーブンス夫妻は、幾多の困難を乗り越え、チベット、ニャロン入りを果たした。現実は厳しく、布教は一向に進まなかったが、夫妻は献身的な医療活動を通じて人びとに受け入れられていく。やがて生まれた息子ポールと領主の息子テンガは深い友情で結ばれる。だが、穏やかな日々も長くは続かない。悲劇が引き起こす怨恨。怨恨が引き起こす復讐劇。そして1950年、新たな支配者の侵攻により、人びとは分断され、緊迫した日々が始まる。ポールもテンガもその荒波の中、人間の尊厳を賭けた戦いに身を投じてゆく。

2020年10月中旬全国書店にて発売。
 


【著者プロフィール】
ツェワン・イシェ・ペンバ(Tsewang Yishey Pemba, 1932-2011)

チベットのギャンツェ生まれ。医師であり作家。1941年にインドのクセオンにあるイギリス式学校に入学して英語を身につけ、1949年にロンドン大学に留学し、医学を学び、卒業後はブータン、インドなどで外科医として活躍。1957年にチベットで過ごした日々をエッセイに綴った『少年時代のチベット』(Young Days in Tiebt)をロンドンで出版。1966年にはチベット人として初めてとなる長編小説『道中の菩薩たち』(Idols on the Path)をロンドンで出版する。その後、創作活動から離れていたが、晩年にようやく実現したチベット旅行をきっかけに、『白い鶴よ、翼を貸しておくれ』(White Crane, Lend Me Your Wings)の執筆に取りかかり、2011年に書き上げたあと、病没(享年79歳)。


【訳者プロフィール】
星泉(ほし・いずみ)

1967年千葉県生まれ。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・教授。チベット語研究のかたわら、チベットの文学や映画の紹介活動を行っている。訳書にラシャムジャ『雪を待つ』、共訳書にトンドゥプジャ『ここにも躍動する生きた心臓がある』、ペマ・ツェテン『ティメー・クンデンを探して』、タクブンジャ『ハバ犬を育てる話』、ツェラン・トンドゥプ『黒狐の谷』などがある。『チベット文学と映画制作の現在 SERNYA』編集長。

書評

「ダ・ヴィンチ」12月号 評者=倉本さおりさん(書評家)
《牧歌的な光景のなか、ふいに鮮血が飛び散る。かと思えば、おおらかな下 半身事情(!)が開陳されたり。読後の感情はひとつに絞れない。そうした物語が持つ圧倒的なまでの豊かさこそが文化というものの正体なのだ》

「週刊金曜日」新年特大号 評者=長瀬海さん(ライター・書評家)
《チベットの現代史背景に蹂躙される民族の悲しみ壮大に描く》

「週刊読書人」2020年12月18日 評者=山口守さん(日本大学教授・中国語圏文学)
《チベットが異文化交流の先進国であった歴史を背景に、友情や愛が対立や戦いの中でどこまで生き延びられるかを描く壮大な物語を展開している》

クロワッサン (2021年1月25日)文学から栄養 よりすぐり読書日記 評者=瀧井朝世さん

《異文化間の受容と対立、力ある者たちによる理不尽。それらは全然昔のことじゃない。今もあるのだ》

チベット文化研究会報TCC (2021年1月号) 評者=風春あゆみさん

《彼の生き様を通して、カムパの生活様式、生き方や、思考形態までが分かり、チベットに興味がある人には、心躍る小説である》

リベラル21 評者=阿部治平さん(元高校教員)

《チベット動乱を語った小説を読む》